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ゲーミングドッグ

by 唐草 [2021/11/09]



 この時期だと夕方の5時半には夜の帳が降りている。まだ5時半なのに、もう暗い。そんな言葉が口をついて出る。
 霧雨混じりの天気の中、ぼくは少し早めの家路を急いで通りを歩いていた。この時間に外を歩いているのは、学校帰りの中高生と愛犬を散歩に連れ出している愛犬家ぐらい。仕事帰りのぼくは、ちょっと場違いな存在かもしれない。
 街を歩いたのは20分程度だったが、その間に何匹もの犬を見た。この時間はちょっとした犬のラッシュアワー。小型犬も大型犬も、その軽やかな足取りを見ると悪天候を気にすることなく散歩を満喫しているように見える。
 ぼくは根っからの猫派だ。いついかなる時も猫のいそうな場所を注視して歩いている。時にゴミ袋を猫に見間違えたりもするが、目の隅に猫らしい何かが映るときを待ちわびている。そして猫を見つけると宝物を見つけたような気分になる。一方で、犬にはさほど興味がない。積極的に探すこともないし、たぶん視界に入っても気づかずスルーしているだろう。
 犬への興味がほとんどないぼくが、夕暮れの暗い街を歩く多くの犬に気がついたのには訳がある。
 多くの犬が、光る首輪や反射材のついたハーネスを身に着けていたからに他ならない。ピカピカと光る様は、それが犬であることを認識するより先に目に飛び込んでくる。あれなら誤って蹴飛ばされたり、気が付かずに轢かれることも無いだろう。飼い主の愛情が輝いていると言っていい。
 だが、実のところぼくは輝く犬たちを見て全然別のことを考えていた。
 LEDで7色に光る輪っかは、ぼくにとってゲーミングPCのパーツにしか見えない。無駄に輝くPCパーツと犬の安全を守る首輪では、光る意味はまったく異なる。考えれば異なることは理解できるが、それよりも先に無駄に輝くゲーミングPCのLEDの光が頭をよぎる。
 夕暮れの街は、七色に輝くゲーミングドッグで溢れている。そう思うと、ありふれた散歩の光景もちょっとサイバーパンクな光景に見えてくる。