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うどんの逆襲

by 唐草 [2021/11/08]



 数年前、初めてAppleがワイヤレスイヤホンを発表したとき、少なくない人々が新製品をバカにした。「有線じゃないと音質が落ちる」とか「耳からうどんが垂れているようにしか見えない」とかネガティブな意見がズラリと並んでいた。ぼくも左右セパレートタイプのイヤホンは落としてしやすいのではないかと気が気でなかったのを覚えている。
 否定的な意見を口にしていた人々は、今の状況をどう見ているのだろうか?苦々しく思いながら今日も有線イヤホンのケーブルの絡まりと戦っているのだろうか?それとも舌の根の乾かぬうちに宗旨変えして、今やワイヤレスイヤホンを使いながら有線イヤホンをバカにしているのだろうか?
 ぼくは未だに有線のまま。こうなっているのは音へのこだわりではない。自粛期間が長かったので、外で音楽を聞くという習慣がなくなてしまったせいだ。スマホにはコロナ前と変わらず音楽ライブラリが入っているが、それを外で聞く機会から遠ざかっていた。だから、ぼくの鞄の中からは有線無線を問わずイヤホンが消えていた。
 久々に移動中に音楽でも聞こうと思い立ったのは、以前の暮らしを取り戻しつつある証拠なのだろうか?机の上に放置されていたイヤホンを手に取ると、慣れた手付きでコードをくるくると丸めて鞄へと突っ込んだ。
 そして、外でイヤホンを取り出そうとしたときに絶句した。
 ケーブルがグッチャグチャに絡まっていたのだ。以前だったら、絡まりを気にすることはなかった。遊び慣れた知恵の輪を解くようにスルスルと解けた。でも、久々の絡まりはニューノーマルの時代を生きるぼくの手に余るものだった。慣れていたとは言え、以前はこんな面倒なことを毎回して音楽を聞いていたのか。改めて考えると無駄なことに集中力と時間を費やしていたとしか思えない。なによりケーブルを解くぼくの姿は、明らかに時代遅れ。なんだか小っ恥ずかしさえ感じる。
 ケーブルの煩わしさに耐えられなかったので、ワイヤレスイヤホンの購入を決意。ぼくも次の時代へと進む時が来た。