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遠い国の話

by 唐草 [2021/11/01]



 親戚がコロナで亡くなったという知らせがあった。
 全国的にコロナの新規感染者数が激減しているとは言え、ゼロになったわけではない。今感染しても重症化するリスクはあるし、すでに重症化している人は世間の動向とは関わりなくリスクの中にいる。統計的な動向を把握することは重要だけれども、ただの数字と見做してはいけない。マクロな視点で統計的なデータを把握しながらも、ミクロな視点で数字の裏にいる人々の姿を想像できるような感覚を忘れてはならない。バランスの取れた視野を持って初めて物事の本質に迫れるのだ。
 と偉そうなことを書いてみたが、今回の訃報はぼくにとって完全に他人事でしかない。
 亡くなったのは法的には親戚ならないぐらい縁遠い人。親の兄弟の配偶者の兄弟という関係になるらしい。血縁関係はゼロだし、感覚的には赤の他人でしかない。そう思うのも当然で、実際に会ったことは一度もない。それどころか名前も知らない。40年ぐらい前に日本を出てヨーロッパに渡って以来、ずっと向こうでの活動を続けていた人だそうだ。ちなみにヨーロッパのどの国かも知らなかった
 そんな訃報をLINEで知らされて、ぼくはどう応えればいいのかサッパリ分からなかった。冷たいようだが「ふ〜ん」とさえ思えなかった。親戚から返信に困る面倒なLINEが来たなと頭を抱えただけ。思い浮かんだのも亡くなった当人のことではなく、「まだヨーロッパはリスクが高いんだな」という地域のことだけ。
 流石に既読スルーはまずいので、どこの国だったかを聞いた。「デンマーク」との返信があったが、国が分かったところでだからどうしたという感じ。デンマークに縁もないので、それ以上会話を進めることはできなかった。
 海外に住む顔も見たことがなければ名前も知らない人の訃報なんて、なんの感情も動かさない。交番に掲げられた昨日の死亡事故件数の数字を見たほうが、まだ心が動く。
 こんなにも関心の持てない親戚(?)のコロナの訃報があるのかと驚いている。