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緑の遠い親戚

by 唐草 [2021/08/16]



 夏の京野菜のひとつに「万願寺とうがらし」がある。「とうがらし」とは名ばかりで辛くはない。長い「ししとう」みたいなもので、爽やかさを感じるほのかな苦味が美味しい野菜だ。その味を活かすのなら凝った調理は不要。軽く焦げ目がつく程度に炙って、粗塩を振って食べるのが一番美味しい食べ方だと思う。
 万願寺とうがらしのことをどう認識するのが、野菜への正しい理解なのだろうか?辛くない唐辛子?それとも細長いピーマン?辛くないことを考えると細長いピーマンという認識が正解に思える。一方で火を通せば種まで食べられることを考えるとピーマンとは違うようにも思える。
 そんなことを考えているうちにピーマンと唐辛子の関係性が気になってきた。
 日本で唐辛子と言えば、真っ赤で細い「鷹の爪」を指す。話は逸れるが鷹の爪というネーミングは秀逸だ。唐辛子の鋭い鉤爪のような形状は鷹の爪らしいし、強烈な辛さの喩えとしても鷹の爪は的を射ている。
 世界に目を向けると様々なとうがらしがある。タイ料理ではピーマンと同じ色の青唐辛子が活躍しているし、南米では同じく緑色のハラペーニョが有名。また、辛いことで有名なブートジョロキアやハバネロは、小さな赤ピーマンのようだ。世界各地からピーマンに似た色や形の野菜を集めたら辛いもののほうが多そうな気さえする。
 分類学的な見地からするとピーマンと唐辛子は、かなり近い植物となる。新しい品種のピーマンの開発に唐辛子をかけ合わせたりすることもあると書かれた記事もあった。ピーマンと唐辛子の形が似ているのは、収斂進化の結果ではなく、単純に近い種だからということらしい。
 ということは、極稀に激辛のししとうがあるように激辛のピーマンが存在するのだろうか?今まで涼しい顔してピーマンを頬張れたのは、ラッキーだったからに過ぎないのだろうか?
 この心配は杞憂だった。純粋なピーマンが辛くなることは無いそうだ。しかし、家庭菜園などで雑に育てると唐辛子と交雑してしまって辛いピーマンができる可能性もゼロではないらしい。辛いものがあると知ってしまうと、コワイもの見たさで辛いピーマンを食べてみたくなる。