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ノートPCが筋を伸ばす

by 唐草 [2021/07/16]



 昨年からビデオ通話が激増している。仕事で使うこともあれば、友人と語らうために使うこともある。テレビ電話誕生から30年以上経過して、ついに相手の顔を見ながら話すのが当たり前になった。そのきっかけが、テクノロジーの進歩だけでなく病魔によるものなんて思いもよらなかったが。
 何度もビデオ通話に参加してきたが、ことごとく顔出しを避けてきた。職場の人との通話がほとんどだったので顔出しするまでもない。というのは建前。本音は、自分の顔が写った画面を見たくないというワガママだった。だから遠隔授業もスライド共有だけで顔出しなしを貫いてきた。その評判は芳しくなかったが、実際にぼくの顔を見たら考えが180度変わっていたに違いない。
 小さな頃からぼくは鏡が苦手だった。それは大人になった今でも変わっていない。自室での通話となれば部屋も覗かれてしまう。醜い顔を見続けながら、プライベートに踏み込まれるなんて耐え難い。だからビデオ通話時代の到来はストレスとなっている。これまで様々な口実でビデオ通話から逃げてきた。でも、いよいよ追い詰められてしまった。
 もう逃げられないのなら正面から立ち向かおうじゃないか。それは覚悟の話だけではない。カメラ設置位置の話でもある。
 ビデオ通話で不愉快なのは、ノートPCのカメラを使っているので下から見上げるアングルで顔が映ること。ぼくの大きく丸い鼻の穴が強調される角度だ。芸能人の写真に決め角度があるように、きっとぼくにだって少しはマシに見える角度があるはず。それは下から見上げるよりも、真正面からのほうが理想に近い。
 だからぼくは、ノートPCを高い台に載せてカメラ位置を高くすることにした。問題は何に載せるかだ。
 本を積み上げたりと様々なことを試した末にたどり着いたのが、部屋の隅で何年も放置されていた木製のストレッチ台だった。ふくらはぎに目一杯負荷をかける30度にセットして大きく開いたノートPCを置くとカメラは顔の真正面になった。画面にも人の顔らしものが映っている。
 ストレッチ台がPC台になるなんてデジタルエクスチェンジの影響は計り知れない。