KL system

グルグル回せ、iPad

by 唐草 [2021/06/18]

　初めてスマホを目にした時、それは驚きの連続だった。なかでも一番進化を感じたのは端末の向きに合わせて画面が回ることだった。傾きを検出すると自動的にクルッと回る画面の動きは、それまでに見たことのないものだった。
　それから10年以上が経過した今、端末の向きに合わせて画面が動くことは当然になっている。画面がクルッと回っても驚きも喜びもない。むしろ意図せぬタイミングで回ったときにストレスを感じることのほうが多い。
　それでも端末の向きに追随しないコンテンツは旧時代の遺物とみなされるようだ。職場のサイトが、画面回転をまるで考慮していなかったので「使いにくい」というクレームが無視できないレベルになっていた。
　2013年にリリースされたそのサイトは、一応スマホアクセスを考えていた。とは言え、端末の向きに追随する機能もないし、大きなタブレットからの閲覧は微塵も想定されていなかった。スマホ系OSからのアクセスを検知すると、画面の向きも機種も無視して問答無用で縦長で幅の狭いレイアウトを返していた。
　残念なことに古いシステムを使い続けているのには、理由がある。入れ替える予算が無いのだ。だか今回も「今までやってきたように無理くり修正できないか？」という無茶な依頼がやってきた。もはやこのサイトは、ぼくのハックで延命されているようなものだ。
　相手がHTMLである以上、ぼくに不可能はない。時代遅れのコードと内からの攻撃に弱いシステムのスキをついて画面回転対応パッチを作ることにした。この作業が、まさか肉体労働になるなんて思ってもいなかった。
　iOSとAndroid、スマホからタブレットまで対応できているかを確認するために、この2日間に渡って手に入るすべての端末を何度も何度も回して画面への追随を確認し続けるハメになった。修正するごとに回して確認を繰り返していたので、軽く100回転は超えている。合計300回転ぐらいじゃないかと睨んでいる。
　10年前に未来を感じた夢の機能のせいで、悪夢のような時間を過ごすことになるなんて。一番多く回したのは、開発用iPad。重いしデカイしで、腕が痛い。

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