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ウーメラ

by 唐草 [2020/12/06]



 昨日から探査衛星「はやぶさ2」の帰還で世間が沸いている。無事に回収されたという報道も入ってきた。ここまでは順調なようだ。今度こそ研究対象になる試料を持ち帰ってくれていることに期待したい。
 初代「はやぶさ」は、奇跡の帰還として美談のように語られている。でも、科学的には失敗を偶然リカバーできただけに過ぎない。結果は良かったかもしれないが、過程はボロボロ。2号機は美談で終わるのではなく、1号機のことを忘れるような科学的な成果を残してほしい。
 「はやぶさ2」は、オーストラリア南部の砂漠に帰還した。報道によってはウーメラという地名も紹介している。とは言え、ウーメラなんて多くの人が聞いたことのない地名だろう。英語的な音ではないので、アボリジニにルーツのある現地語なのではないかと考えた人もいるかも知れない。
 実は、はやぶさの着陸地点であるウーメラはいわくつきの土地。報道の映像に「立ち入り禁止」や「危険」を告げる看板が映っていたことに気がついた人もいるのではないだろうか?また、オーストラリア軍の協力に違和感を覚えた人もいるかもしれない。
 ウーメラが着陸地点に選ばれた理由はいくつかあるだろうが、最大の理由はこの広大な砂漠が世界最大の軍事実験地区だからだろう。ウーメラは、大型ミサイルの発射試験を筆頭にさまざまな軍事実験や訓練を実施するために確保されたオーストラリア軍の土地。民間人の立ち入りは厳しく制限されている。過去には9回の核実験すら行われていているので一部地域は放射能汚染されている。ある意味で冷戦を裏側から支えていた機密エリアなのである。
 軍拡競争に歯止めがかかって以来、ウーメラの役割は少しずつ変化してきた。その1つにJAXAとの協力が挙げられる。
 日本のロケット発射実験の一部はウーメラ立入禁止区域内で実施されてきた。土地の使用目的やこれまでの協力関係を考えると「はやぶさ2」の帰還地点が軍事実験場のど真ん中だというのは自然の成り行きと言える。
 数年に及ぶ宇宙の旅を終え、ついに地球へ帰還。着陸地点が核兵器による放射能汚染地域(のすぐ近く)だった。完全にSFの世界の話にしか聞こえない。