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謎の卵の正体は?

by 唐草 [2020/05/05]



 先日、ベッドの上にツヤツヤした小さな粒が落ちているのを見つけた。大きさは山椒の実ぐらいだが、もう少し薄くゴマのような形だ。色はニスを塗ったウォルナット材のように落ち着きとツヤのある深い茶色だ。
 ぼくはこの粒を見た瞬間イヤな予感がした。真っ先に頭に浮かんだのが、寄生虫の卵だったからだ。
 我が家には多くの猫がいる。今までに、いろいろな要因で様々な寄生虫に感染していた。ゲロとともにビチビチ跳ね回る線虫を勢いよく吐き出したこともあるし、むき出しの尻からゴマのようなウリザネ虫の卵が撒き散らされたこともあった。完全室内飼いと言えども油断はできない。人間についてきたノミやダニから感染する可能性だって無視はできないからだ。
 ただ、この茶色い卵は見たことのないものだった。どの猫が寄生虫を拾ってしまったのだろうか。家の中で感染が広がる前に発生源を突き止めて対処する必要がある。
 と言う訳で、この1週間はことあるごとに猫の尻の穴を観察する毎日だった。まるで特殊性癖の持ち主のようだが、これはれっきとした飼い主の義務である。
 しかし、ぼくの尻穴観察を嘲笑うかのように、連日ベッドの上にだけ卵が出現し続けていた。汚染除去するように卵を丁寧に清掃するのにも疲れてきた。
 事態は急展開を迎えた。
 今までは1日1個ぐらいのペースで出現していた卵が、5個ほどまとまってぼくのベッド付近に出現したのだ。もしこれが寄生虫だったら猫の体内で相当に感染が広がっている。この状況でぼくのベッド付近だけに卵が現れるのはどう考えても不自然である。
 ここでぼくは寄生虫以外の可能性を考えだした。
 粒の見た目は、寄生虫の卵でなかったら植物の種にしか見えない。でも、ぼくの部屋に植物なんて無い。ベッドの中でなにか得体の知れない植物が育ているとは考えたくはない。
 ベッド周辺に置かれているものを順番に手に取り子細を確認していくことにした。小さな紫色のアイピローを手にしたときのことだった。1粒の卵がポロリとこぼれ落ちた。アイピローの端が切れていて、そこから種がこぼれたのだ。
 ぼくが寄生虫の卵だと疑っていたのは、目の疲れを癒やすアイピローの中に入っていた植物の種だった。正体が安全なものだとわかってホッと一安心。これで猫の尻穴を観察する生活から開放される。