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巡る自慢話

by 唐草 [2019/10/25]



 今、我が家は再びのリフォーム中である。我が家は築40年ぐらいの古い家屋。経年劣化もあり、壁紙が剥がれたり水回りがおかしくなったりと様々な問題が次から次に起こっている。手をこまねいていたら人が住んでいるにも関わらず幽霊屋敷のような有り様になってしまう事だろう。だから数年おきに手を入れる必要がある。もっともリフォームと言っても、今回の作業は3年前の夏に行ったような床も壁も剥がしてコンロを交換してや水道の場所を動かしたリフォームに比べればずっと小規模なものだ。
 今回作業を依頼した会社は、前回の工事を施工したところ。丁寧な仕事と時間を守ること、そして妙なところをケチってコストカットして安く見せようしなかったこと。この点が再びの依頼につながった。家のように高価なものは、下手にケチるとかえって損をするというのが我が家の家訓だ。そんな考えにこのリフォーム業者は見事に当てはまった訳である。
 3年ぶりに我が家を訪れた業者は、前回作業したキッチン周りを見せてほしいと告げてきた。これには驚くべき理由があった。
 前回のリフォームの打ち合わせは、キッチンのデザインを巡って大いに揉めた。冷蔵庫をどこに置くか?カウンターキッチンを導入するか?壁の色を何色にするか?ありとあらゆることで揉めに揉めた。我が家の中でも意見が対立していたし、施工業者やショールームのアドバイザーとも対立した。
 一番揉めたのは、壁の色である。我が家の総意として出した案は、業者にもアドバイザーにも大いに反対された。それは、キッチン側の壁面だけ床と同系色のウッドパネルでダークブランにして、それ以外を壁紙で白くしたいというシンプルな要望だった。これを聞いた彼らは「素人がなに言ってんの?」と言いたい本心をぐっと飲み込んで、「そんな施工例はない」とか「こっちの方が人気だ」だとか言葉を変えながらぼくたちを説得しようとしてきた。
 だが、強情だしデザインに関して素人ではない我が家は折れなかった。
 その結果、なにが起きたのか。
 我が家の施工例は、某大手建材会社の施工例として業者向け講習会のモデルケースとなったのである。
 3年ぶりに我が家にやってきた業者は、自分の施工例がモデルケースになったことを自慢気(実際、講習会で自慢したらしい)にぼくらに語ってくれた。最初は反対していたくせによく言うよ。素人はどっちだって話である。こうして、業者の自慢話はぼくの自慢話に変わるのであった。