カレンダー

2020/09
  
   
       

広告

Twitter

記事検索

ランダムボタン

望まぬ結末

by 唐草 [2020/08/19]



 昨日から庭木に作られた鳩の巣に異変があった。それまで時折体の向きを変えるぐらいで1日中置物のようにじっと巣に止まっていたのに、昨日はずっと巣を空けたままだった。
 しきりに巣の中をつついていた鳩の動きからすると一昨日の8/17に卵が孵った可能性が高い。翌日には見たことのない白っぽい小さな欠片が巣の真下に落ちていた。きっと卵の殻の欠片だろう。
 孵化した後は、雛に餌を運ぶため動きも活発になるだろう。だから巣を空ける時間は増えるだろうと予想していた。でも、朝から晩まで1日中空けるとは考えにくい。あまりにも無防備だ。
 一夜明けた今日、やはり鳩の姿はなかった。
 巣の中を直接見ることはできないけれど、たぶん雛は死んでしまったのだろう。だから、これ以上巣にとどまる必要がなくなったに違いない。野生動物は人間からすると冷酷とも思えるほど合理的な振る舞いをすることもある。強者だけが生き延びられる世界なのだ。敗者である弱者への悼みとは無縁だのだろう。
 毎日何度も抱卵の様子を観察していたので、この結果は残念である。とくにこれから面白くなりそうだと期待していただけに落胆の色を隠すことはできない。鳩の親よりもぼくの方がショックを受けていることだろう。
 雛が力尽きてしまった原因はなんだろう?やはり暑さではなかろうか。
 よりによって孵化直前の先週末は、日本中で観測史上最高の気温を記録していた。いくら木陰にあるとは言え、巣の中も相当暑かったに違いない。野生動物は暑さから逃れるすべを持っていない。人間でさえバタバタ倒れる暑さの中で小さな卵などひとたまりもなかったのかもしれない。
 もしぼくが小学生だったら夏休みの自由研究に鳩の巣の観察を選んでいただろう。ついに動きがあると思った矢先の悲しい結末。自然の厳しさを知る良い研究になっただろう。
 なお、前半2週間はほとんど動きがないので、理解のない教員には観察をサボったを思われるだろう。そして、変化が起きるタイミングで観察続行ができなくなったという結論もやはり手抜きに見える。自然の厳しさを素直に記録したのに理不尽にサボりを疑われ大人の社会の厳しさを知ることになったに違いない。