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秒速BBQ

by 唐草 [2020/08/23]



 以前にも書いたことがあるが、オンラインゲームのイベントには独特の面白さがある。そのひとつに、ボイスチャットはおろかテキストチャットすら無いのに自然と役割分担がなされ、一糸乱れぬ無駄のない動きを見せることが挙げられる。
 この週末、ぼくは『Fallout 76』の期間限定イベント『Meat Week』に参加している。このイベントは人気があり3回目の開催だ。内容はオンラインBBQだと思えばほぼ間違いない。大勢で集まって会場をきれいにして肉を焼く準備をする楽しいイベントだ。ただ、BBQと言えどもそこはFalloutの世界。焼く肉はどう考えても汚染されているし、会場にはなぜか銃声が響き渡っている。
 イベントは8分の時間制限内で達成することが求められている。だが、ゲームの仕様上素早くクリアを狙ったほうが安定する。3回目にして多くの人がその仕様を十分に理解しているようだ。
 その結果、イベント開始のカウントダウンが始まる2分前からBBQ熟練者たちは行動を起こしている。
 先に会場入りしたメンバーのうち3名がドラムを演奏してBGMを奏でている。他の3名が肉焼き機をぐるぐると回し始めている。こうしてカウントダウン中にポイントを稼いでいるのである。他のメンバーだってボーッとカウントダウンを眺めているわけではない。一見すると無意味に会場を走り回っているように見えるが、そうじゃない。走り回って収穫する野菜や片付けなくてはいけない食べ残しの残飯の位置を確認しているのだ。
 カウントダウンが終わった瞬間、皆が一斉に動き出す。まずは薪を焚べ、次に根こそぎ野菜を収穫しながらステージに現れる小動物を狩り、食べ残しと動物の糞を片付ける。そして誰が号令をかけるわけでもないのだが、30秒ぐらい経過した時点で一斉に納品へと走り出す。
 そしてだいたい45秒でクリアとなる。まさに秒速BBQだ。
 自分がどれぐらい働けばクリアに必要な役割を果たせるかを完全に把握していなければできない無駄のない動きである。
 ゲームで遊んでいるものとして頼もしさすら感じる自発的な動きである。これを気持ち良いと捉えるか、気持ち悪いと捉えるかは判断が分かれるところだろう。当然ながら、ぼくは気持ち良いと思っている。