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リカー

by 唐草 [2019/03/31]



 バグのせいで日本語と英語が入り混じって表記されていた『Fallout 76』は、ぼくにとって生きた英語の教材だった。幸か不幸かバグは無事解消されて、今ではすっかり日本語版らしい画面に落ち着いた。もちろん遊びやすくなったのだが、どことなく酔いがさめてしまったような寂しさもある。
 数週間続いたバグのおかげでぼくの英語力は、ほんのわずかだが向上した気がする。特にアルコール関連の単語や表現に詳しくなった。これって教科書のようにお行儀の良いテキストからは学べない内容だ。強く印象に残っているのは、デイリーチャレンジとして記載されていた次の文章だ。
 
 Consume liquor, wine and spirits.
 
 「酒を飲め」という簡単なお題である。ぼくは、ゲーム内で量産していたビールを消費してこのお題をクリアしようとした。でも、ダメだった。
 "liquor"って酒全般のことじゃないの?日本だと意識高めの酒屋が「リカーショップ」って名乗っていることがるけどビールは対象外なの?
 考えたところでよく分からない。ゲームのチャレンジはワインを飲むことでクリアできたが、どうにもスッキリしない。英語の辞書で"liquor"について調べてみた。"liquor"には、アルコール全般という意味もあるが、蒸留酒を指す場合もあるようだった。確かにビールは蒸留酒ではないからクリアできなくて当然か。
 ゲームに登場する酔っぱらった酒検査ロボット「ビブ」のおかげで、ぼくはまたひとつ役に立てるのが難しい知識をゲットしたのである。
 英語での厳密なアルコール表記を知って思い出したことがある。
 最寄り駅のデパ地下にある酒屋の看板である。その店は、「酒」という字の右側の「西」みたいな部分をビールジョッキにしたオシャレなピクトグラムを掲げている。デザイン的によくできているので、お店を利用したことのないぼくの目にもロゴが飛び込んできていた。そして「酒」のロゴの下には"liquor"と書いてあった。
 ビールの絵の下に"liquor"と書いてあるのは、やはり変なのかもしれない。きっと英語ネイティブの酒飲みがロゴを見たら、ぼくらがビールジョッキを掲げた日本酒の造り酒屋を見た時と同じような違和感を覚えるのだろう。先日書いた偽日本語パッケージに近いものがある。教科書を熱心に読みこむだけでは、生きた英語なんて全然学べないんだなぁ。