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レースはもう始まっている

by 唐草 [2019/02/14]



 2月の上旬は、ぼくのようなメカ大好きなF1ファンにとって一番楽しい季節だ。レースの方がずっと楽しいのは分かっているけれど、ライブ動画をテレビでもネットでも視聴できる環境にないので(料金が高すぎてお金を払いたくないだけだが)、レース真っ盛りの春から秋よりも各チームの新車が発表される2月が一番ワクワクするのである。
 レース以外でも新車発表のようにF1を楽しめるポイントがいくつかある。オフシーズンのドライバー移籍やエンジンサプライヤー変更を楽しむのは、ストーブリーグという名がつけられているほどにメジャーな楽しみである。他には、フェラーリがチャンピオンシップを諦めて「我々はすでに来年に焦点を当てている」的なことを言い出すのが何月になるかを予想するのも楽しい。翌年のレギュレーション策定をめぐるチーム間の駆け引きと騙し合いは、もうひとつのレースともいえる。
 世界最速の自動車が織りなすコース内での華やかなレースと札束で殴り合うコース外での汚れた政治争いの両方を楽しんでこそのF1である。
 数年前まで新車発表と言うのは、シーズンの開幕を告げる重要なイベントだった。チームは、そのシーズンを戦うF1マシンを華やかに見せてスポンサー企業を露出させる。ぼくたちのような市井のファンは、新しいレギュレーションで作られた見慣れぬマシンの写真に一喜一憂して好き勝手なことを言って盛り上がっていた。
 でも、それも過去の話。
 今年の新車公開は、今までとは様子が異なっていた。
 あるチームは、昨年のマシンに今年のカラーリングをしていた。別のチームは、現物の車は一切見せずCGのみの発表だった。さらに別のチームは、自動車開発時の常套手段であるカモフラージュ塗装を施したマシンの公開だった。これでは今年のマシンがどんな工夫に満ちているのかさっぱり把握できない。
 ファンからするととてもがっかりな新車発表会が続いている。でも、これぞF1の政治争いである。去年型のマシンならいくら見られてもかまわない。CGなら実際と違うものを簡単に発表できるし、本物と同じモデルだとしても隠したいところは自由に隠せる。新車の秘密をギリギリまで隠そうとする巧妙な作戦だ。
 コース外ですでにレースは始まっているのである。きっと易々とは見せられない驚きに満ちた工夫がされているからこそ巧妙で姑息なカモフラージュが続いているに違いない。レース仕様の実車が公開される合同テストが待ち遠しい。それまでは、憶測と噂話に花を咲かせていよう。