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監視時代

by 唐草 [2019/12/06]



 電車の扉の上で流れている映像には、つい目を奪われてしまう。任天堂の週間クイズ番組をちょっと楽しみにしているぼくがいる。今日も呆けた顔でモニターを見ていたら気になるものが視界に入った。モニターの脇に見慣れぬシールが貼られていたのだ。
 シールには、防犯カメラ稼働中というようなことが濃いグレーの文字で書かれていた。
 ついにJR中央線にも防犯カメラが導入されたのか!導入されるという話は聞いていたが、それがいつになるのかは全然知らなかった。駅などにも導入を告げる掲示や案内もなかったように記憶している。JRの取り組みに無関心なひとりの乗客の感想としては、まさに青天の霹靂と言うべき導入である。
 一体どこにカメラが有るのだろう?早期に防犯カメラが導入された車両では、車両の前後に透明の球体カバーに覆われた全方位型のカメラが設置されている。中央線も同じだろうか?ぼくは首を伸ばして車両の天井を眺めた。その表情は、これから本屋で万引をしようと企む中学生のよう好奇心と敵意の混じった表情だったかもしれない。しかし車両の天井を見つめても、ぼくが思い描いていたカメラの姿はなかった。
 まさか「撮影しているよ」という脅しだけなのだろうか?そんな「ドライブレコーダー設置済み」シールみたいなことをJRがするだろうか?犯罪抑止行為があるとしても、その嘘はマズいだろう。きっとどこかにぼくの想像とは違うカメラが隠されているはずだ。今のスマホカメラの性能を考えれば、スパイ映画のようにどんな場所にもカメラを仕込まれていても不思議はない。
 先入観を捨てて邪な表情で天井を再確認したら見慣れぬのものがあった。扉に一番近い蛍光灯に長さ10cmぐらいの細長く白い箱がついていた。車両の中を向いている面だけが黒い。絶対にこれがカメラだ。カメラの形が分かった途端に恐ろしい状況が見えてきた。すべての扉に防犯カメラが設置されていたのだ。つまり、1両に8台のカメラが設置されていることになる。たぶん死角はどこにもないだろう。
 ぼくは、後ろめたいことが無いので監視されても一向に構わない。とはいえ、帽子を目深に被り、サングラスやマスクを着用していることもあるので絶対に優先監視対象にされているだろう。ちょっとでも女性の方を見ていたら監視室のアラートが鳴っても不思議はない。