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ドラム缶効果

by 唐草 [2019/02/25]



 2週間ぐらい前にあるオンラインゲームのアバターをドラム缶に変更したという話を書いた。その結果、想像もしていなかった変化を体験することとなった。
 オンラインゲーム上での人付き合いはドラクエXでお腹一杯になっていた。そのためドラクエXを辞めて以来いくつものオンラインゲームで遊んできたが、いずれもソロプレーに徹してきた。もちろんマルチでの参加が必須なゲームやイベントもある。そういうものには、その場限りの野良パーティーで参加してきた。パーティーを組んでも自動定型文で挨拶をするだけの最低限の冷たい関係しか築かないようにしていた。
 自分の周囲にいるキャラクターはNPCだと思って遊んでいるようなものであるとさえ考えていたこともある。そういう気楽な遊び方も悪くはない。でも、仲良くしている人を見ると少しだけ羨ましくも見えるのも事実である。
 ドラム缶に変身してからもぼくの遊び方は変わっていない。気の向いた時間に野良で淡々と遊んでいるだけだ。お姉さんキャラのアバターを捨てドラム缶をかぶっても、ネカマをしていたわけではないので振る舞いや考え方が急変することはない。中の人であるぼくは自称クールで寡黙、つまり周囲から見れば典型的な陰キャのままである。
 中身は微塵も変わっていないけれど、外身の方向性は180度変わった。これによって周囲の人がぼくを見る目が大きく変わったようだ。
 それまでのキャラはゲームのテンプレキャラに近い量産型美人のお姉さんだった。ゲームの中には似た人が何人もいる。だから珍しくもなく誰も気に留めない。「街を行きかう人々は、中の人などいないNPCなのだ。このオンラインゲームを遊んでいる生身の人間なんて、ぼくとあと二人ぐらいに違いない」という仮説を強固にするのに十分反応だった。
 でも、他にはいないドラム缶をアバターにしたら世界が変わった。人が多く集まるショップの近くでキャラを放置しているだけなのに、ぼくのことを嘗め回すように見つめている人が少なくない。興味を持った人は「いいね」的なサインを送ってきたりもする。さらには、フレンド登録申請まで飛んできた。量産型お姉さんキャラを使っていた時は、そんなことは1度もなかったのに。まさかドラム缶がこんなにも他人の興味を引くことになるなんて、これっぽっちも考えていなかった。やはり他とは異なる個性は何物にも代えられない魅力なのだろう。
 個性を発揮したことで見知らぬ人との交流が生まれ、オンランゲームならではの楽しみができたことは嬉しい。同時に、定型文の挨拶だけで済まない人間関係が生まれたことの面倒さも感じている。どんな風に遊ぶのがぼくにとってベストなのだろう?10年以上オンラインゲームで遊んでいるけれど未だによく分からない。