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by 唐草 [2020/11/22]



 登山のTV番組が好きだ。でも、ぼくは自分で登山をすることはない。次の一文を「それなのに」で続けるべきか「だからこそ」で続けるべきかが難しい。ぼくが登山番組が好きなのは、自分では絶対にたどり着けない場所の風景を家にいながらにして見られるから。
 テレビを見ているぼくの頭の中は相反する2つの感情が渦巻いている。険しい登山道を見ていると自分では絶対に登りたくないし、好んでこんな苦労に身を投じるなんてバカなんじゃないかと思っている。一方で、山頂からの雄大な風景や平地とは異なる植物相を自分の目で見てみたいという憧れもある。
 多くの山をテレビを通して知ったとは言え、現実のぼくにとって山は縁遠い存在のままだ。いくら憧れがあっても重い腰を上げて登山してみようとは思わない。数年前に登った高尾山がぼくの限界であり、名高い百名山なんて架空の存在と大差ないような位置づけだ。
 ずっとそう思っていた。
 でも、先日テレビを見ていたら古い記憶が蘇り、ある可能性が浮上した。
 ぼくは百名山のうちの1つに登頂したことがあるかもしれないという自分でもビックリな可能性だ。
 自発的に山へ向かっていたのなら絶対に登ったことを忘れたりはしない。でも、人に手を引かれるように歩を進めた結果の登山なら話は別。
 中学2年生のときの林間学校でどこかの山に登らせられた。友人らと短い旅行を楽しんだ記憶が断片的にあるだけで細かいところはよく覚えていない。それでも記憶の断片をかき集めてみると次のような話が浮かんでくる。
 夏休み前の7月上旬の登山で暑かった。結構高い山で山頂前の眺望が開けていた。コンディションが悪いと雪渓が残っている可能性があったが、ぼくらは平気だった。登山の行程は半日程度で日帰り。下山はスキー場だった。前日に五色沼に寄ったが5色という表現は腑に落ちなかった。火山資料館みたいなところで当時最先端だった3D映像を見せられた。翌日の自由行動で喜多方ラーメンを食べに行くと張り切っているグループがあった。
 これらのことを考えると、ぼくが登った山は磐梯山としか思えない。コースを考慮すると裏磐梯と呼んだほうが良さそうだ。
 あの林間学校から何年が経ったことだろう。今になってようやくあの登山経験の価値を理解できた。