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ラーメンを待つときの顔

by 唐草 [2020/03/17]



 今日は、食堂で定食には目もくれずラーメンを注文した。あっさり系の醤油ラーメンだが、スープに浮かぶ具材を見るとご当地ラーメンだということに気がつくだろう。それなのにご当地ラーメンをアピールせずに、飾らず「醤油ラーメン」と名乗っているところに好感を持てる。
 食堂でラーメンを頼むと、ちょっとだけ気まずい時間が流れてしまう。
 定食はすべて準備済みなので、オーダーをすれば3分クッキングの段取りのように秒単位のスピードで温かい料理が出てくる。だが、ラーメンだとそうはいかない。冷凍麺を使っているので、どうしても3分ぐらい待つ必要がある。ぼくは定食を受け取る人が流れていく横で、小さくなってラーメンがやってくるのを待っていた。
 そのときにふと気になってしまったのだが、どんな顔をしてラーメンを待っていればいいのだろう?今までに何十回とラーメンを注文してきたが、初めて気になってしまった。この手の疑問は、自分の呼吸を意識してしまったときと同じで考え始めるとドツボにはまってしまう。
 厨房の方を真剣な面持ちで眺めていたら、まるでラーメンを催促しているようである。だからと言って、あえて厨房に背を向けるのも不自然である。では、現代人らしくスマホを見ていたらどうだろう?これも「もう待つのには飽き飽きだ」という険悪な雰囲気になてしまう。一生懸命にラーメンを準備してくれている食堂のおばちゃんたちにプレッシャーを掛けたり、不愉快な気分にさせてしまうような態度は慎みたい。
 だが、だからと言って目をキラキラと輝かせているのも変な気がする。ぼくが待っているのは、380円のラーメンだ。もちろん美味しいのだが、大の大人が舌なめずりをしながら待つほどのものでない。また、「待て」を命ぜられた空腹の犬のように目を潤ませるほど飢えてもいない。いずれにせよ、食堂でランランと目を輝かせていたらただの危ないやつにしか見えない。
 じゃあ、いっそのことロボットのように無表情はどうだろう。それだとまるで充電を待つかのようだ。カロリーが補給できればラーメンでもカロリーメイトでもなんでも構わないという食に興味のない人に見えるだろう。これも食堂の人たちに失礼だ。
 結局の所、ぼくがどんな顔をしていても誰かが不愉快になるようだ。ぼくのイケメンからは程遠いこの顔が、すべて悪いのである。