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もっと寒い場所を求めて

by 唐草 [2020/01/13]



 今日はこの季節にしては暖かかったので、いつもの公園まで散歩に行った。装いは、およそ1月とは思えない軽いものだった。
 例年この時期の散歩やサイクリングは完全防寒が欠かせない。風を絶対に通さないアウトドア用のジャケットを羽織って、手袋をつけて、帽子をかぶって、マフラーで首元を守る。下着は当然のように上下ともヒートテックだ。体の末端部をフワフワとした厚手の布で覆い隠し体温が奪われるのを防ぎつつ、発熱下着で体の芯の熱をキープする。こういう隙のない装いが欠かせない。
 それがどうだろう。今日の装いは、季節を先取りしたかのようだった。コートこそやや厚手だったが、手袋も帽子もマフラーもなし。下着は綿の半袖。3月ぐらいの装いである。寒い冬がキライなぼくとしては、この暖かさが地球温暖化の
結果だとしたら大歓迎だ。暖かさに浮かれぼくの頭の中はすでに3月である。
 公園に着いたら大きな広場では、1月らしくいくつもの凧が上がっているのが目に入った。ほとんどが三角形のビニール凧なので伝統的なお正月の空のイメージからは少し離れている。それでも、いまだに1月の遊びといえば凧揚げが選択肢になるのかと感心してしまった。
 ただ、凧を大空へと舞い上げているのは、遠く赤城山の方から吹いてくる冷たく乾いた北風ではなかった。南からの温かい春の香りがしそうな風だった。
 公園を見渡してみると、気の早い梅の花がすでに開いていた。これは歓迎できる暖冬の痕だろう。でも、暖冬の影響のすべてを好意的に捉えたわけではない。
 暖かい公園の中では、多くの野鳥が枯れ枝の間から顔を覗かせていた。スズメ、メジロ、ジョウビタキといった小鳥が軽やかに舞い、キジバトが元気よく地面を突いていた。そしてカラスが我が物顔で人々の頭上を飛んでいた。
 だが、ぼくの大好きなあの鳥の姿はどこにもなかった。池の水面にカモの姿は見つからなかったのだ。
 例年この季節になると小さな人工池にカモが数羽浮いている。足ヒレで鯉を蹴りながらスイスイと気持ちよさそうに水面を進んでいく。その姿を見つめてぼくは、「カモを抱えて水に飛び込みその浮力を体験したい」と叶わぬ夢を描くのが常だった。
 でも、今年の池の水面は静かだった。カモが飛来した気配すらない。この暖冬はカモには暑すぎるのだろうか?