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砂塵に埋もれる家

by 唐草 [2018/06/30]



 小さい頃は、世の中不思議であふれていた。心も頭も無垢な好奇心に溢れていたなんて言えば聞こえはいいが、要するに無知でバカなだけである。じゃあ、大人になったら世の中から不思議は無くなってしまうのか?もちろんそんなことは無い。相変わらず無知でバカなままなので、よく分からないことはダース単位で数えるほどに転がっている。
 そんなぼくの不思議の中に「遺跡」という存在がある。かつては賑わいを見せた都市などがどうして砂や土の中に埋もれてしまうのかが、正直なところよく理解出来ていない。人間の一生のスケールで考えていても埒があかないことであるというのは何となく分かる。それでも、あんなにも深く埋もれてしまうのは体感的に解せないものがある。
 例えばタクラマカン砂漠のような砂しかない場所ならば埋もれてしまうのも納得である。でも、うちの近所を掘り返すと縄文頃の遺構が出てくるのには納得できない。むしろ誰かが意図的に埋めたと言われる方が信じられるほどだ。
 だが、そんな考えがちょっとだけ変わる事態に巻き込まれている。
 春先の記事に書いたが、近所の桜畑が売り払われた。先日からついに宅地開発が始まった。畑だった場所を重機が力強く掘り起こして下水管などの地下インフラを埋めている。
 工事開始以来、南風の強い日が続いている。その結果、窓を開けていると家の中まで土埃が入って来てしまう毎日だ。半日窓を開けているだけで、床は土でザラザラだし、足の裏は真っ黒になってしまう。1日に2度の雑巾掛けをしないと家中の床に土が積もってしまう有り様が続いている。だから窓を開けたくないのだが、この暑さである。窓を開けずにはいられない。畑だった頃にこんなことは一度も起きなかった。やはり、樹木の根や下草が土壌を抑えていたのだろう。
 床に積もった土埃を雑巾で拭き取っている時に感じたのだ。このまま何もしなかったら我が家は、砂塵に飲み込まれてしまう。たぶん1週間もあれば廊下は屋外と変わらぬ状態になるだろう。1ヶ月もあれば草が茂るほど土が積もっても不思議は無い。数値的な査証はどこにも無いが、感覚的に将来的に遺跡と呼ばれることになる何かが埋もれていく過程を理解できたような気がする。