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雪かきの時間

by 唐草 [2018/01/23]



 昨晩、我が家のネコが遭難した。
 十分に雪が積もった18時過ぎに外へ出ると1匹のネコが大騒ぎした。こう言う場合は、叱るよりも実際に出して外が大変だと言うことを理解させた方が早い。外に出て、積もった雪に肉球の踏み跡をつければ寒さを理解できるだろう。と言う訳で、ネコの希望通り外へ出してやった。
 5分もすれば入れてくれと騒ぐだろう。
 玄関でネコが騒ぐのを待っていたのだが、玄関からは物音1つしない。30分経った時点で玄関を開けてみたのだが、そこにネコの姿はなかった。
 おいおい、本当にこの雪の中散歩&トイレに行ったのか!?なんてバカなんだ。
 玄関から名前を呼ぶ。近くにいれば、ダッシュで戻って来るはずだ。だが、何かが動くような物音はしない。サラサラと粒のしっかりした雪が降っている音しかしない。耳をすまして、もう一度名前を呼ぶ。
 すると、かすかにネコの鳴き声が聞こえた。うちのネコの声である。その声は弱々しく、自力ではどうにもできない状況に巻き込まれていることを告げていた。
 そう、雪の中へと踏み出したものの身動きが取れなくなっていることを訴えていた。
 慌ててコートを羽織り懐中電灯を手に外へと飛び出た。慌てていたので、手袋をすることさえ忘れていた。
 呼びながら声のする方を探す。どうやら隣家の車の下から声が聞こえる。
 だが、車の下を覗こうにも、車はすでに雪に埋もれ始めている。手で雪をかき分け、頭が入るぐらいの穴を開ける。雪に頭を埋めるような形で車の下を覗き込むとうちのネコがいた。だが、引っ張り出すには奥過ぎる。呼んでも前には出てこない。
 どうも彼が言うには、家に帰りたいが帰るルートが雪に埋もれて動けないとのことらしい。雪の冷たさが身にしみたのか、深い雪の上に足を伸ばそうとしない。この軟弱な都会ネコめ。
 このまま放置していても埒があかないし、ネコも凍えてしまう。
 仕方がないので、ネコが歩くルートの雪かきをすることにした。雪が降りしきり中、アルミの雪かきスコップを振り回した。まず、我が家の塀沿いに隣家までの道を確保。そして、住居侵入を問われても反論できないような振る舞いで隣家の門扉の下のみを除雪。ネコにとって門は、開けるものではなく、くぐるものだからだ。こうして、隣家の車の下から門を経由して、我が家の玄関までの道を確保した。
 そして、玄関でもう一度ネコの名前を呼ぶ。雪が減ったのを確認したネコは、恐る恐る最初の一歩を踏み出す。足が潜らないことを確認してからは早かった。足の動きが見えないほどのスピードで我が家の玄関まで走ってきた。こうして、遭難したネコの救助は完了した。
 そして、夜が明けた。昨晩の奮闘の跡は、完全に雪に埋もれていた。