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粗挽きで

by 唐草 [2021/03/30]



 コーヒー好きの方から黒地にショッキングピンクのラベルという尖ったパッケージのコーヒー豆を頂いた。オシャレラベルにはオシャレフォントで色々書いてあるが、視認性よりオシャレさを重視しているせいで極めて読みにくい。一見しただけでは、コーヒー豆が入っていることすら分からないデザインだ。
 送り主の説明によるとこだわりの焙煎をしている店の豆だそうだ。こだわりがあるのは焙煎方法だけでなく抽出方法にも及ぶ。粗挽きにして91℃のお湯で抽出せよとの指示が添えられていた。注文の多い料理店のようだ。パッケージの小さい文字には「服を脱いで飲め」と書いてあるかもしれない。
 ガスコンロしかない我が家のキッチンで91℃のお湯を沸かすのは難しい。細かい指示は無視して、沸騰前に火を止めるぐらいのおおらかさで対応しよう。
 粗挽きには誠意を持って応えたい。ぼくが使っているコーヒーミルには挽き加減を調整するネジが付いている。回すことで歯が動いて挽きの細かさが変わる原始的な機構だ。
 ネジを回そうとミルに手をかけとき、ぼくは2つの疑問に襲われた。
 まず、ネジをどちらに回すと粗挽きになるかという疑問だ。ミルには何も書いていない。試しに少しだけ回しても歯が動いているようには見えなかった。もうひとつは、現在設定がどの程度の細かさなのかという疑問。もしすでに粗挽き設定ならネジをどちらに回しても狙い通りの結果は得られない。
 考えても分からなので、ネジを回してはちょっと挽くという実験的アプローチを繰り返すことにした。
 手始めにネジを時計回りに1/8周ぐらい控えめに回した。豆はいつもと同じようにしか見えない。さらに回しても変化が感じられない。逆に回すのが正解だったのか?今度は少し大胆に反時計回りにグルグル回した。それでも変わったようには感じられない。慎重を期して小さな調整を繰り返しているうちに1杯分の豆は挽き終わってしまった。石橋を叩き割ってしまったような気分だ。
 結局、何もわからないままコーヒーを淹れた。それでも浅煎りならではの酸味が効いた一杯を楽しむことができたので結果オーライ。