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意識の高さで楽をする

by 唐草 [2020/12/19]



 授業をするのなら楽したいし、楽しいものにしたい。こう願っているものの現実はなかなか厳しい。ぼくのような下っ端の人間には裁量がないので、肩書が立派なことしか取り柄のない先生が締め切りのことしか考えずに書いたであろうありきたりのシラバスに従うことしかできない。
 こんな状況では現場に立つ教員だって楽しくないし、受講させられる学生だって退屈してしまうのは当然だ。腐らずに出席しているだけでも「優」評価を与えるに値するだろう。でも、ぼくの裁量ではそんなことはできない。誰もが我慢を強いられる状況だけが続いている。
 硬直化していた教育現場に少しだけ新しい風が吹き込んできた。2020年度後期に担当した授業は、学年全員が受講する必修授業。ちょっと特殊な授業運用形態で学年を20人ぐらいのクラスに分けて授業が行われる。各クラスでは教員ごとに得意なテーマで授業をすることになっていて、学生がテーマを見てクラスを選択する。学生が自主的にクラスを選択するというのがポイントだ。
 昨年末にこの仕様を聞かされたとき、ぼくは千載一遇の好機だと感じた。うまくことが運べば、任意の学生だけを集めることができる。そうなれば、とことん楽できると確信した。
 ぼくが授業で一番面倒に感じているのは、やる気のない学生への対応。そういう連中には「やる気がないなら2度と来なくていい」と言いたいのだが、本音を口にすることはできない。いつも渋々尻拭いをしているような気分で接していた。
 テーマを自由に設定できるとなれば、そんな悩みともおさらばだ。やる気のない学生が絶対に選ばないであろうテーマを設定すればいい。
 そこでぼくが目をつけたのが意識の高い学生。やる気があるなら意識高い系でも構わない。とにかく「どうせサボるから楽そうなのを選ぼう」という消極的な理由での選択を排除することだけを考えた。ただ、やりすぎてしまうと定員割れで、人気クラスの抽選落ちメンバーで固まってしまう。狙うべき意識の高さを見誤ってはいけない。ちょっと難しそうなテーマだけど、将来を考えると挑んでおいて損は無いだろうと思わせるギリギリのラインが大切だ。
 そんな狙いで開講された授業ももうすぐ終わる。今のところ感触はよく、ぼくは楽できている。狙いは成功したっぽい?学生がどう思っているかは知らないけど。