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店じまいの準備

by 唐草 [2020/10/09]



 swfは、ぼくにとって思い出深いフォーマット。一時期は天下をとっていた。その流れに乗ることができたので、ぼくはこのサイトでゲームを配信できたし、それによって人と人のつながりも生まれた。ゲームで遊んでくれた人、ともに面白いゲームを作ろうと切磋琢磨した人、そしてぼくに仕事を任せてくれた人。
 フリーランス街道に足を踏み入れたのは、それなりに人を集められるゲームを作って公開しているという実績に裏打ちされていた。実力主義の世界に飛び込むきっかけも、その海で溺れかけながらもどうにか泳ぎ回れたのも、すべてswfというフォーマットのおかげ。
 生き馬の目を抜くようなWebの世界で永遠に続くものはない。この世界は振り返ることなくビルド&スクラップで邁進し続けている。日々新しいものが生まれるきらびやかな世界に見えるが、実態は泳ぐのを止めたら死んでしまうマグロの群れと変わりない。取り残される恐怖におののきながら、次から次へと新しいものにしがみついては投げ捨てるというのを繰り返しているだけ。
 swfも2020年をもって完全に幕を閉じる。ぼくが作ってきたすべてが、再生できないデジタルデータの塊へと姿を変えることが約束されている。まるで押入れの奥に眠るビデオテープのように。
 全力を出せば別フォーマットに移植できないこともないが、そこまでの労力を払う気にもなれない。このままひっそりと消えていくのを待つつもりでいる。とは言え、すべてを押入れの奥の段ボール箱の中に葬るつもりはない。仕事で使っているいくつかのデータは回収したい。
 以前、ぼくは仕事用スライドをswfで作っていた。パワポと違ってブラウザさえあればどこでも再生できたからだ。このスライドだけは、是が非でも回収しておかないと支障がでる。今日は、データのサルベージをしようと思っていた。
 だが、その目論見は頓挫した。
 ぼくのmac環境では、すでに再生に必要な環境が整わなくなっていた。完全終了まではまだ数ヶ月あるが、皆が徐々に店じまいの準備を進めている。だから、すでにシャッターが降ろされているも同じようなものだった。
 R.I.P SWF。ぼくのスライドよ、安らかに眠れ。