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良い自転車は上

by 唐草 [2020/08/04]



 銀行でお金を下ろすために久々に街へ出た。近くのコンビニATMでも良いのかもしれないが、手数料のことをよく分かっていないので銀行まで足を運んでしまう。機器トラブルに巻き込まれても、銀行ならその場で対応してもらえる安心感もある。要するにケチでモノグサでビビリだから、わざわざ銀行まで行っているのだ。
 緊急事態宣言解除後も自宅勤務を貫いているぼくは感染症予防に大きく貢献しているだろう。でも、引きこもりのように狭い自室にこもってPCかゲーム機に向かっているだけの毎日を過ごすことになっている。そのせいで社会との距離が離れてしまった気がしている。ニュースで街の人出が増えてきていると耳にしても全く実感が伴わない。遠くの国の情報を聞いているかのようだ。
 街に出ると自分と社会の距離を少しだけ縮められる。人出や店舗の様子を直に見て、8月の日差しを肌で感じるのだ。これらの情報は家にいながらでも知ることはできる。でも、ぼくにはその数字を現実味のある形で思い描けるだけの想像力はない。だから街に出る必要があるのだ。
 約1ヶ月ぶりの駅前は自粛なんてどこ吹く風という感じだった。老若男女問わず大勢の人がいつもどおりに行き交い買い物をしているように見えた。お昼時だったのでファストフード店には列ができていたし、スーパーのお弁当売り場では品定めをする人が折り重なっていた。その一方で、花屋が閉店していた。日常の賑わいを取り戻したかのように見えるが、まだ花を買う余裕はないようだ。
 駅前の地下駐輪場は、ぼくが通勤していた頃よりも混んでいた。暑くても密を避けるためにバス利用が減っているのだろうか?いつものレーンに自転車を止められなかったぼくは、愛車を引きながら駐輪場をキョロキョロと見回しながら奥へと進んでいった。
 そのとき面白い事実を発見した。
 上下2段のレーンになっているのだが、上レーンに停めている人はほとんどいなかった。下が空いているのに上に止めようなんて思う人はそういない。それでも数台の自転車が上レーンに停めてあった。そのいずれもがマウンテンバイクなどのスポーツ自転車だった。
 スポーツ自転車は軽いので上段に上げやすいということもあるだろう。それ以上に見せびらかしたいという真理が自転車を上段へと運んでいるように思えてならない。ぼくだって一瞬上段を使おうかと思ったのだから。