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電話復権

by 唐草 [2020/07/07]



 今年の3月に四苦八苦しながらも携帯電話の番号移行を行った。苦労の末に維持した音声通話契約だったが、その必要性には疑問符がついていた。移行前も移行後もまったくといって言いほど通話を利用していなかったからだ。2段階認証用の電話番号だと割り切って音声通話を切ってSMSと通信だけにした方が良かったのではないか?そんな思いを拭い去れずにいた。
 音声通話の必要があっても、まず電話は使わない。格安SIMを使っているので通話料金が高い。さらに月額料金を下げるために無料通話オプションを切っている。だから携帯電話から通話を行うと公衆電話で遠距離通話をしたときぐらいお金がかかってしまう。なによりアプリを使えばネット経由で無料通話ができる。わざわざ高いお金を払って電話を選ぶ理由なんて無い。
 もはや携帯電話には、通話昨日の必要性がないという事実がドンドン明らかになってきた。電話という名がついている機器だったはずなのに、もっとも電話機らしい通話機能が要らなくなってしまうとは皮肉なものである。
 家に設置している固定電話の必要性も、携帯電話同様に揺らいできていた。もはや家の電話を鳴らすのは、怪しげな勧誘か振り込め詐欺ぐらいだろう。留守電にメッセージが残されていたためしなんてほとんどない。ネット回線だけを維持して固定電話契約を解除しようと考え始めていた。
 だが、ここのところ立て続けに通話の必要性を見直す機会に遭遇している。すべての原因はコロナ禍にある。
 多くの店や病院が、人の密を避けるために予約制へと移行している。ネット予約に対応している店舗もあるが、それは以前からネット予約に対応していた場所ぐらい。急な時代のニーズの変化についていけている場所は少なく、多くが昔ながらの電話予約を採用している。だから、ぼくも予約を取るために何度も電話をかけることとなった。
 最後の最後で頼りになるのは、優れたものではなく一番普及しているものだということをまざまざと見せつけられた気がする。
 という訳で、少なくともコロナが収まるまでは携帯の音声通話切り捨てを見送ることにした。家の固定電話も維持しておこう。この決断は、コロナ禍を生き抜く知恵である。でも、同時にテクノロジーの敗北に思えてならない。