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なぜ寝てしまったのだ

by 唐草 [2020/07/02]



 ぼくにとって夜ふかしは、夜ふかしじゃない。日常だ。
 在宅勤務が中心になって以来、社会の規律という支えを失ったぼくの体内時計は自由奔放なリズムを刻み続けている。フリーランス時代よりも融通が利く毎日なので、生活サイクルは夏休みの大学生並みに乱れている。朝日を浴びてから寝ることは減ったとは言え、午前2時の丑三つ時なんてゲームで一番盛り上がっている時間だと言える。午前3時までに寝ていれば、健康的なサイクルだといえる。
 そんな毎日を送っているのだが、昨日は起きた瞬間からすっと眠かった。夜ふかしのツケがやってきたのか、気温のせいでよく眠れなかったのかは自分でも分からない。いつもどおり7時間近く寝たはずなのに、まるで3時間しか寝ていないときのように眠かった。仕事中に椅子で居眠りをしてしまった。
 夜ふかしが大好きなぼくとは言え、生理現象には敵わない。どんなにゲームで遊びたいと願っていても、自然にコントローラーを落としてしまう。夢の中でレベル上げをするのが精一杯である。だから、昨晩は珍しく午前1時ちょっと過ぎには電気を消して眠りについていた。翌日に早起きする予定でもなければ、こんな時間に眠ることなんてありえない。
 夜が明け、ネットを見たぼくは己の睡魔に負けたことを心から悔やんだ。
 ネットでは、午前2時過ぎに東京の空で輝いた火球の話題で盛り上がっていたからだ。記事に目を通すと、かなり大きな火球が観測されたらしい。写真を見ると流れ星なんかとはぜんぜん違うことがひと目で分かる。火球が流れた方向は、ちょうど部屋から見える向きだ。窓を開けていれば絶対にその姿を目に焼き付けることができただろう。窓から見えなくても、雷を思わせる轟音に気がついたに違いない。起きてさえいれば、絶対に何らかの兆候に気がついたはずだ。
 でも、その時間ぼくは枕を抱いてぐうぐうと熟睡していた。夜の街を照らした光にも気が付かないばかりか、雷に似た天を切り裂く音にも気が付かないままだった。あぁ、よりによってなんでこんな天体ショーのあった日に早寝してしまったんだ。年に数度しか無いぼくの奇跡と文字通りの天文学的確率が重なってしまうなんて。ついていないにも程がある。