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ボタンを押すだけの簡単な仕事

by 唐草 [2020/06/12]



 実に不本意だが、午後から予定外の出勤をする羽目になった。理由は前回、前々回と同じ。リモートからの操作を受け付けなくなってしまったPCを再起動するためだ。
 今日は自分のデスクのiMacを再起動しに行くのではない。再起動を行うのは地下サーバ室のラックの一番奥で小さなサービスを提供しているサーバだ。サーバ室に設置されたサーバ機と言うとラックに収まった薄べったい機械を想像するだろう。でも、今日の相手はぜんぜん違う。基板むき出しの自作PCなのだ。PCオタクの心を鷲掴みにするワイルドでセクシーな見た目だが、安定を求めるサーバ管理者としては無防備な姿に不安を覚えるばかりである。
 その自作PCサーバは厄介なことに仮想マシンのホストとして稼働している。物理的には1台だが、ネットワーク的にはたくさんのサーバが動いているように見える。だから、たった1台がダウンしただけなのにサービスは壊滅的な影響を被っている。
 危なっかしい見た目とは裏腹に稼働実績の高い安定したサーバだった。今までにダウンしたことはなかった。そんな優等生が急に音信不通になってしまったのだからぼくの心中は穏やかでない。心を落ち着けるためにいくつかの確認を行いたかったが、外部からのアクセスはすべて拒絶された。この原因は、ハードウェアが壊れてPCが止まってしまった可能性が高い。
 職場のコロナ対策のルールでは、3日前までに出社申請を行うことになっている。サーバが止まってあたふたしている人が何人もいる中、そんな悠長なことを言っていていいのだろうか?それにハードの故障なら異常発熱による火災のリスクだってある。何より重要なのは、このぼくが「サーバが壊れているかもしれない」という不安を胸に抱えながら週末を過ごしたくないということだ。組織がどうなってもぼくは気にしないが(どうせ次の更新で切られるだろうし)、自分の心の平穏を乱すものを放置するのは耐えられない。
 と言う訳で「本日は在宅勤務」と申請を出してあることなんて無視して、一路サーバ室へと急ぎ足で向かった。誰もいないし空調が強烈なサーバ室に感染のリスクなんてまるでない。申請なんてしなくても全く問題はないだろう。
 自分の心の平穏のためだけに片道1時間かけてリセットボタンを押してきた。