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絶対使わない

by 唐草 [2020/05/24]



 我が家で魔窟と呼ばれている押入れの整理を断行した。ぼくが立体パズルのように物を収納しているので、魔窟から何かを取り出すのは容易ではない。箱根細工の仕掛け箱を開けるときと同じように、収納物を正しい位置で正しい向きに合わせないとものが取り出せない。出し入れには不便しているが、超高密度の収納を実現できてもいる。その密度は、押し入れを荒らす猫ですら首を突っ込む隙間がないほどだ。
 出し入れがうんざりするほど面倒なので、魔窟に収納されたものは長い間放置されがち。必要なものを頑張って取り出すことはあっても、そこで力尽きてしまう。一度全部の荷物を出して断捨離のように「捨てるもの」と「捨てないもの」に分けようなんていう考えは、ぼくの収納術の精神的圧迫の前では霧散してしまうのである。
 だが、今日は違った。心地よい五月晴れの陽気に後押しされたこともあり、我が家に巣食う魔窟に爽やかな風を通す気力が湧いていた。その気まぐれのようなやる気が消えてしまう前に、ぼくは手を動かした。まるで巨大なルービックキューブと格闘するようにして、押し入れから大量の段ボール箱やプラスチック製のコンテナを取り出していった。
 そして、ひとつひとつ見聞していった。仕事や生活スタイルが変わったことで不必要になったものもある。後生大事に箱だけ残していたものもあった。一見すると捨てても問題なさそうなものがドンドン出てくる。だが、いらない箱だと油断してはならない。ぼくは空箱を収納するほどバカではない。箱を開けるとマトリョーシカのように次々と他の箱が出てくるのだ。これが魔窟と呼ばれる所以である。
 箱の中の箱に収められているものは一体何なのか?パンドラの箱を弄るように箱を開けまくって正体を見極めていった。
 1時間後、部屋は物で溢れていた。懐かしいもの、忘れていたもの、今となってはゴミでしか無いもの。様々なものがぼく自身を形作る地層のように折り重なっていた。
 1つ興味深いものを見つけた。シリアルポートをUSBに変換するケーブルだ。仕事で必要になって機器の初期設定をするために1回だけ使ったケーブルである。規格の過渡期に存在するこういう変態変換ケーブルってキメラ的な魅力がある。この先絶対に使わないと断言できるけど、どうしても捨てられそうにない。