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さよなら、人生最長

by 唐草 [2020/05/21]



 先日、人生で一番髪が長くなっていると書いた。もちろん90年代に流行った髪型のリバイバルなどではない。不要不急の外出を避け続けていた結果、理髪店からも足が遠のいてしまっただけのことである。だから長いと言っても中途半端。女性がこの髪の長さだったらショートボブと呼ばれるぐらいだろう。
 ただし、ショートボブは髪の長さだけの話だ。ぼくはオッサンだし、元は短かった髪が伸びた結果なので頭の前と後ろでぜんぜん長さが違う。まっすぐ引っ張ると顔を半分ぐらい隠してしまう前髪なんかは、妖怪の趣がある。この髪型は、自然の成り行きでたどり着いてしまった惨状としか言いようがない。
 頭髪が最悪な状況になっていても、ステイホーム推奨のこの期間なら問題はないだろう。だって、どこにも行かないし、誰とも会わないからだ。ぼくは自分の楽しみのために髪の毛をセットするようなタイプではない。世間体を保つため、つまり第三者の目がなければ自分の髪の毛には無関心である。
 だから、このまま非常事態宣言が続く間は、まるで願掛けで髪を切らないようにしているかのごとく髪を伸ばし続けていくのだろうと考えていた。
 ところが、その予想を自分で覆すことになってしまった。
 野放図な髪の毛に視野を奪われることに耐えられなくなったのだ。仕事でPCに向かっているときも、ゲームでテレビを凝視しているときも、タブレットでマンガを読んでいるときも、あるとあらゆるタイミングで文字通り目の前をゆらゆらと横切る前髪がぼくの集中を乱す。時には髪先が眼球を突き刺してくることさえもあった。
 もう、これ以上自分の前髪の横暴さに耐えられそうにない。一思いに自分で切ってやろうとハサミに手を伸ばしさえした。しかし、切り終えた自分の姿を想像してハサミを置いた。だって、前髪パッツンの落ち武者が毎日鏡に映るなんて悪夢でしか無いからだ。
 ついにぼくは重い腰をあげて髪を切りに行く覚悟を決めた。たぶん4ヶ月半振りぐらいの散髪である。もう、コロナも自粛も関係ない。物理的に前が見えない状態からまともな状態で脱出できるのなら何だってしたやるという暴走気味のやる気がぼくを後押しした。
 1時間後、久しぶりに身分証明書の写真と同じ髪型に戻った。前がちゃんと見えるって素晴らしい。これで、もう4ヶ月引きこもっていられるぜ。