カレンダー

2018/06
     
       

広告

Twitter

記事検索

ランダムボタン

尻に来る授業

by 唐草 [2020/05/20]



 今日は、記念すべきぼくのネット生放送デビューの日となった。放送は、今一番話題のジャンルである。と言っても、体を張った動画やゲーム実況ではない。視聴していたのはわずかに30名程度の小さな放送。何のことはない、ただのオンライン授業である。
 初めてのオンライン生中継の結果を一言に集約すると「尻が痛い」に尽きる。自分でもこんな結果になるなんて想像できなかったし、臀部が痛いという現実を受け入れられないでいる。まったく、こんなことになるなんて。
 ぼくの担当する授業は、調べ物と発表を中心としたアクティブラーニングというやつだ。間違っても体を激しく動かすエクササイズの授業ではない。しかも今日は初回の授業なのでガイダンスだけだった。この内容ならば教室で立って授業を行っても尻が痛くなるようなことはない。それなのに自宅の机に座って放送していただけなのに、ぼくの尻はまるで峠道を歩き切ったときのように疲労の悲鳴をあげている。
 原因は、単純明快である。
 初めての生放送を迎えるにあたって、ぼくは入念な準備を進めてきた。自分で自分の放送を聞くという拷問のような実験も行ったし、ノイズを避けるために即席マイクスタンドまで作った。猫だって部屋から追い出した。とにかくぼくの声以外の音が少しでも紛れ込まないように最大限の努力をした。
 準備の果にたどり着いた1つの答があった。究極の静かさを実現するためには、ぼく自身が彫像のように微動だにせず放送をすれば良いという結論である。マイクスタンドの導入によって体の位置を固定しやすくなったこともあり、ぼくは60分間体を動かさぬ覚悟で放送に向かった。もちろん少しは動いてただろうけれど、映画館で食い入るように映像を見ているときよりも動きは小さかったはずだ。
 こうして「ガサガサ」というような生活ノイズを減らすことに努めた。その成果が如何ほどだったかは、つまらない授業を聞かされていた学生にしか分からない。それでも、きっとうまくいったはずだとぼくは信じている。
 だって、自分の尻にダメージが来るほど身じろぎしていなかったんだもの。緊張して体を石のようにしていた代償は、すべて尻へと集まった。今は歩くのもやっとという状態である。普通に授業やるよりよっぽど疲れたよ。