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歴史を遡る

by 唐草 [2020/04/22]



 ソフトウェア業界には「枯れた技術」という最上級の褒め言葉がある。普通はネガティブな印象の強い「枯れた」を褒め言葉に使うことに違和感を覚える人も多いだろう。ぼくだって初めてこの言葉を聞いたときは、てっきり嫌味かと思ってしまったのもだ。
 枯れた技術は、長年に渡って使われ続けてきた優れたソフトやアルゴリズムのことを指す。長年に渡って姿を変えないさまを枯木に例えているのだろう。データを並べ替える時に使われるクイックソートなんかは、50年近く利用され続けている。これは枯れに枯れた技術で、ソフトウェア界のミイラのような存在と言えるのかもしれない。
 日進月歩のコンピュータの世界で枯れた技術が尊ばれるのはなんとも不思議に思えるかもしれない。でも、ソフトウェアがアルゴリズムの実装だと考えれば、数学と似た世界だと理解できるかもしれない。三平方の定理が2600年ぐらい活用され続けているのと同じである。ユークリッド幾何学なんかは、枯れた技術と呼んで差し支えないだろう。
 先人の偉大な知恵として尊ばれている枯れた技術であるが、普通にコンピューターを使っている限りその存在を見つけ出すのは難しい。手のひらサイズの端末を指でタッチしている現代に、パンチシート時代に考案された50年前から続く技術が隠されているなんて想像することさえできない。
 もちろんスマホをポチポチタップしているだけでは、枯れた技術を見つけることは難しい。今でもコンピューターを自動化して使いこなそうとか考え始めると先人たちの偉業が至るところに散りばめられていることに気がつく。今のITの世界は、カラッカラに枯れた技術の上に成り立っているのだろう。
 今日はサーバ更新処理を自動化しようと画策していた。最近ではブラウザから操作できる管理ソフトとかもあるけれど、ぼくがたどり着いたのは古文書に書かれていそうな古い技術の組み合わせだった。3個ぐらいの枯れたコマンドを正しい順番で組み合わせるだけで、ぼくのやりたいことは簡単に実現できた。
 コンピューターの勉強が進むに連れ、古いことを学ぶ機会が増えてきている。日々、歴史をさかのぼっているようである。