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町内鳥類ネットワーク

by 唐草 [2019/12/30]



 今年も野鳥に餌をやる季節がやってきた。これは冬の大きな楽しみのひとつである。穀物や種がぎっしりと詰めたバードフィーダーを塀の上に設置してスズメの飛来を心待ちにしていた。
 この数年、毎年餌やりを行っている。そこから学んだ一番のことは「鳥たちは餌台をセットしてもすぐにはやってこない」ということである。だは、この学びは活かされていない。最初の1羽が来るまでは、毎年クリスマスプレゼントを待つ子供のようにソワソワしてしまう。
 例年、餌台を出してから3日ぐらいで最初のスズメがやってくる。日を追うごとにスズメの数は増えていく。餌台が賑わい出すとハトがやってきて、その図体の大きさでスズメを追い払ってしまう。ここからは毎日が野生の攻防である。そんな鳥たちの日常をカーテン越しに観察するのが、寒い冬の密かな楽しみなのである。
 ところが、今年は様子が違った。餌台を出して5日経っても、1羽のスズメもハトもやってこなかった。餌台は閑古鳥が鳴いていた。
 6日目にしてようやく1羽のハトがやってきた。巨大な体で餌台を独占して、掃除機がゴミを吸い上げるような勢いで餌を食べ尽くしていった。いまだにぼくが大好きな小さなスズメの姿はない。
 今年は我が家周辺の緑が激減した。桜の苗木を育てていた畑は住宅に姿を変えたし、多くのスズメが集っていた小さな竹林も跡形もなく消えた。特に竹林が消えた影響は多いだろう。この竹林は夕方に通るとスズメの合唱が、真夏のセミの声のように聞こえていた。竹に雀という図案は日本古来の意匠だが、これは生態に根ざしたデザインなんだと納得したのはいい思い出である。
 この冬、スズメたちがやってこないのは寝床であった竹林が消滅してしまったからではないだろうか?散り散りになったスズメたちは、どこへ行ってしまったのだろう?もうこの街にはスズメはいないのかもしれない。餌台はハト専用になってしまうのだろうか?そんな不安がこみ上げ始めていた。
 餌台設置から8日目の今日、ようやくぼくの考えが杞憂だと証明された。ついにスズメがやってきたのだ。3羽の小さなグループでの飛来だった。
 一度やって来れば、一安心である。あとは鳥たちの間にあるとしか思えない口コミネットワークに任せるだけだ。それは、あたかも鳥版食べログのようなものだ。今年も鳥からの☆をたくさんもらって、餌台が賑わうことを期待した。