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奇妙に暖かい

by 唐草 [2019/12/18]



 例年、12月中旬を過ぎクリスマスや正月の声を聞く時期になるとぼくは全身にヒートテックを纏うタイツ人間になっている。レトロなアメコミヒーローのように全身タイツで歩き回っているわけではない。ズボンやシャツの下に身に着けているだけだ。
 タイツが好きなのかとフェチな質問をされたとしたら、ぼくの答はいつだって「NO」である。体の動きを阻害するタイツなんて誰が好き好んで着るもんか!というのがぼくの偽らざる本音である。でも、ぼくのポリシーなど真冬の寒さの前では、たちどころに縮こまってしまう。冬の寒さを避けられるのなら、タイツにだって悪魔にだって魂を売ってしまう。それが、寒さに弱い軟弱男の考えなのである。
 こうして、ぼくは毎年冬になると長袖長ズボンのヒートテック下着に身を包んで師走の空気に立ち向かう。それでもダメそうなら、ダメ押しで腹や腰に使い捨てカイロを貼る。これがぼくの冬を乗り切る定番スタイルなのである。
 でも、今年は違う。アウターに包まれていない足を守るために下半身だけはヒートテックの下着に身を包んでいる。でも、上半身の下着はただの綿のシャツ、しかも半袖のまま。使い捨てカイロに至っては、準備すらしていない。
 このスタイルの違いから推察できる事実は、2つしかない。
 ひとつは、2019年のぼくが急になんの前触れもなく寒さに強くなったという仮説である。腹の脂肪層が増えたことで耐寒性能が向上することはあるだろう。でも、幸いなことにぼくの体重に大きな変化はない。脂肪も筋肉もつかない体は、相変わらず守備力が低そうなままだ。食生活を含めたライフスタイルにも変化はない。だから、ぼくが寒さに強くなったという仮説を支持する要素は何ひとつない。
 となれば、考えられる理由はひとつしか残されていない。今年の冬が暖かいのだ。事実、今日の午後は疑いようなく暖かかった。関東の冬らしい乾燥して張り詰めたカミソリのような空気はどこにもなかった。肌でも分かる湿った空気、それはまるで冬の終わりを告げるような柔らかな空気が街を覆っていた。
 ぼくの気の迷いではない。温度計には、10月中旬ぐらいの気温が記録されていた。ここまで暖かいと、奇妙な感じすらする。
 とは言え、寒さに弱い貧弱なぼくとしてはこのまま暖かい冬が続いてくれると嬉しい。