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突然のハロウィン仕様

by 唐草 [2019/10/31]



 何年も前から職場の職員向けWebサイトが地味でつまらないと感じていた。自分たちで開発したシステムなので、機能的には最大限この職場用に最適化されている。でも、優れているのは機能だけ。見た目に関してはかなりひどい。白黒ディスプレイで表示しても見た目が変わらないであろう色彩設計は、見ていて気分が滅入ってしまう。無骨なコンクリートの基礎をむき出しにしている倉庫のような重さと堅苦しさに覆われている。
 見ていて楽しくないものは、当然のことながら使っていても楽しくない。ぼくにとって楽しくないということは、機能が優れていたとしても許すことのできない汚点である。
 ぼくは与えられた権限で可能な限り職員向けサイトを改良しようと戦いを挑み続けていた。その成果が、先日書いた自サイトへのクロスサイトスクリプティングすれすれの行為である。本来はお知らせを掲載するための自由記述欄にCSSとJavascriptをごっそり書き込んで、見た目を変化させるすべを見出した。
 それ以来、ぼくはサイトを誰の許可も得ずにこっそりと、そしてカタツムリが進むぐらいゆっくりと改良を続けている。白かったところをいきなり赤くしたら改変がバレてしまうだろう。でも、毎日グラデーションの階段を1段づつ登るように変えていけば、きっと誰も気が付かないはずだ。ぼくはそう信じて、数年前に流行った微妙な変化を見つける映像のような改変をコツコツと続けてきた。
 しかし、そんな地味な改変を続けていても面白くはなかった。そして、サイトは相変わらず橋桁のように無表情で重鈍で面白味のかけらもなかった。今なら、退屈な公共物にビビッドなスプレーでグラフィティアートを描く連中と心を通じ合わせられそうだ。
 そして、ぼくはついに我慢の限界を迎えた。
 この季節の騒ぎに乗じて、サイトをハロウィン仕様に変えたのだ。地味なサイトの左下にカボチャを3つとコウモリが2羽のイラストを配置してやったのだ。もう犯行を隠すことはできない。
 でも、誰も何も言ってこなかった。退屈さに耐えられる人々はこの悪戯にも無関心なのだろうか?それとも皆が退屈からの開放を受け入れてくれているのだろうか?
 何の反応もないのでよく分からない。反応が欲しかったぼくは、ついに白かった背景を夕暮れを連想させる黒からオレンジのグラデーションに変えた。これが意外に好評だったようだ。
 初めはトリックだった突然のハロウィン仕様は、多くの人のトリートになったようだ。ぼくとしては、複雑な気分である。