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USBのような鍵

by 唐草 [2019/10/30]



 USBほど浸透した接続規格は無いだろう。スマホを持っている人なら誰もが一度は触ったことがあるという驚異の普及率である。歴史上、こんなにも栄えた接続規格はないだろう。
 今では当たり前のように使っているUSBだが、登場時のインパクトは大きかった。PCの電源を切らなくても抜き差しできるというのは当時の常識をひっくり返すものだった。端子が巨大なパラレルケーブル接続から開放されたのもありがたかった。キーボードであれプリンターであれ、ディスクドライブなんでも自由につなげるという汎用性の高さにも新時代の到来を感じたものである。
 USBというシンプルな略称も普及に一役買ったことだろう。これがPCの規格名によくある「IEEE 1234」みたいなシステマチックな名前だったら、ここまで広く受け入れられていなかったに違いない。また、正式名称である"Universal Serial Bus"というお硬い名前を前面に押し出していてもダメだっただろう。それはIEEE 1394 "Firewire"の滅亡の歴史を見れば明らかである。
 現在でもどんどん拡張が進んでいるUSBが、ぼくらのIT生活を簡単で便利なものにしてくれたことに疑いの余地はない。でも、同時にUSBがぼくらに大きなストレスをもたらしたことを忘れてはならない。
 平たいUSB(Type-A)の裏表を間違えるという事故が多発するようになった。誰もがUSBを刺そうとして何度も向きを直した経験があるはずだ。なまじ抜き差しが多い分、この事故に巻き込まれる可能性は高い。USBの裏表問題は、規格が世の中に普及しだした90年代末期から現代に至るまでにどれだけの時間を失わせたことだろう。
 使い慣れたPCでさえ瞬時にUSBの向きを判断することはできない。接続するためには最低3度ぐらい接続を試みる必要がある。
 職場の鍵が、完全にUSBと同じなのである。ハイテクキーを使っていると言う意味ではない。不思議なことに職場の鍵は、どちらに回せば施錠になって、どちらに回せば解錠になるのかがまったく覚えられない。長く使っても正しい向きが覚えられず何度もトライしてしまうと言う意味でUSB的なのである。
 ありふれたシリンダー錠で特別な点はなにもない。それなのに一向に回す向きが覚えられないのだ。毎日朝と晩に無様に鍵をガチャガチャやる姿は、USBでプリンターを接続しようとして苦戦するときとまるで同じなのである。