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スポンジの呪い

by 唐草 [2019/09/11]



 台風15号が残していったのは、暴風による無数の爪痕と残暑と言うにはあまりにも暑い夏本番のような気温である。どちらもまったくありがたくない。訪れかけていた秋の気配は、太平洋高気圧に吹き飛ばされてしまったようだ。
 ぼくの装いも麻の半袖シャツに麦わら帽子で首に保冷剤を巻いている夏仕様。夏の装いと言えども、こんな暑い日は1秒でも屋外にいる時間を減らしたい。だが、ぼくの願いは届かなかった。もっとも、この願いを叶えてくれる神様がいたとして、それがなんの神様なのかなんて知らないけれど。
 駅のコンコースを降りて自分が乗るバス停を見たらちょうどバスが止まっていた。バスを降りたと思われる人々がこちらに向かって歩いているが、始発のバスの横に並ぶ人影はなかった。つまり、バスは出発直前だ。ダッシュすれば間に合うか?
 バス停までは100mぐらいあるし、すでに出発の時刻を迎えている。ドタドタと走ったところでダメだろう。引くときは引く百戦錬磨のスポーツ選手のように冷静な判断でぼくは、バスを見送ることにした。
 次のバスまであとちょうど10分ある。このまま暑い外で待っているのは避けたい。冷房の効いた店に逃げ込んで涼んでいたいが、お茶を飲んだりするには短すぎる。家電量販店を冷やかしても良かったのだが、もっと時間を有効活用したかった。
 10分あれば何ができるだろう?
 コンビニで昼食を買うのは余裕だ。おにぎり全種類制覇を掲げる今のぼくが、店で迷うことなど何もない。流れるように店内を進み、おにぎり2個とお茶と菓子パンを取ってSuicaで手早く支払いを済ます。ここまでわずか2分の早業である。日本中のすべてのコンビニ利用者が今日のぼくのように動ければ、レジ待ちの列は消えるだろう。
 残り8分。まだ色々できそうだ。
 職場の食器洗いスポンジがヘタっていたことを思い出す。よし、100均に寄ってスポンジだけを買ってこよう。コンビニでの振る舞いと同じように迷いなくキッチン関連売り場へと進む。しかし、100均のキッチン関連コーナーはコンビニのおにぎり売り場よりずっと広い。ここまで無駄のない動きで売り場をすり抜けてきたぼくの足が止まってしまった。
 その一瞬の逡巡が運命の分かれ道だった。売り場をかき分けるように進んでどうにかスポンジ(4個入100円)を手にして店を出たぼくの目の前に衝撃的な光景が広がっていた。それは、ぼくが乗ろうとしていたバスが停留所を出る光景だった。
 あぁ、スポンジ売り場を把握していないがために、結局炎天下で10分のバス待ちをするはめになってしまった。