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川は怖い

by 唐草 [2019/08/16]



 夏のレジャーと言えば水遊びだ。海に川、そしてプールと水のあるところに多くの人が集まっている。うだるような暑さから逃れるには、水辺が一番。泳げなくても、水をバシャバシャと掛け合っているだけでも楽しいものだ。冷静に考えると水遊びの何が楽しいかわからないが、いつもとは違う場の雰囲気が水しぶきさえ輝かしいものに見せてくれているのだろう。
 その一方で水は、人の命を奪う危険な存在でもある。今年もニュースで何件もの痛ましい事故が報道されている。報道されていない事故だってたくさんあるだろう。九死に一生を得るような危険な目にあった人も少なくないに違いない。
 夏の日差しを受けてキラキラと輝く水面を見ていると自然の水が危険な存在だということなんてすっかり忘れてしまう。
 ぼくは多摩に育った人間なので水遊びといえばもっぱら川だった。多摩川や秋川の川辺で遊んだ記憶がある。小さい頃は、膝に届くぐらいの水辺で流れる水の重さ感じながら駆け回ったり、水切りにチャレンジしようとデタラメな投球スタイルで騒がしい投石を繰り返したりといろいろな遊びを経験した。少し歳を重ねてからは、静かに川釣りに興ずることも増えていった。
 何度も川を訪れていろいろな遊びを経験したが、泳いだ経験は一度もない。ぼく自身が水泳に苦手意識があったというのもあるが、それ以上に周囲の大人がぼくを脅していたことの方が大きな要因である。
 親だけでなく様々な大人から繰り返し「川は怖い」と脅されていた。具体的に何が怖いのかは、注意する人によってまちまちだった。ある人は「川底の石は苔でヌメっているので転びやすいので怖い」と言う。別の人は「いきなり深くなるから怖い」と言う。また「流れの速さは見えないから怖い」とか「急に水かさが増えるから怖い」と言う。
 小さい頃は大人たちの恐れる何かを理解していなかった。言葉には本気の恐れの色があったのでぼくは従っていた。釣りをするようになってからは、大人たちの恐れを理解することができた。川は罠の仕掛けられた危険地帯と同じようなものなのだ。
 また、こんな話も聞いたことがある。海で遊び慣れていると川で溺れやすいという話だ。海には海の危険があるが、川の危険とは違う。一番違うのは、川の水が真水だということ。海水よりも浮力が少ないので海の感覚のまま川で泳ぐと体がイメージほど浮かばずパニックに陥りやすいらしい。たぶん本当だと思う。
 川は怖い。