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エレベーターのマナー

by 唐草 [2019/07/26]



 最近、ネットなどで聞いたこともないマナーの話を目にする機会が増えている。「判子はお辞儀しているように上司の印に向けてあえて斜めに押すのがマナー」だとか「徳利でお酒を注ぐ際は尖った注ぎ口では無い方を使え」とかそんな類のマナーである。そんなマナーは聞いたこともないし、実践している人も見たこともない。
 一説によるとマナー講師と呼ばれる人材教育界隈の人々が、毎年マナー講座を開くために新しいマナーを作り出しているなんて噂もある。真偽はよく分からないが、もしそれが事実ならフェイクマナーということになるし、いずれ誰もマナー講師の言うことなど聞かなくなるだろう。マナー講師は自分の手足を食べて延命する蛸のように自滅していくのかもしれない。
 マナーなんて相手を不快にさせないためのものである。重箱の隅を突くような細かい所作を気にする前に見直すべき基本的なことはたくさんあるだろう。
 エスカレーターのマナーとして急ぐ人のために片側を開けるという話があったが、これも安全上の理由から過去のものになろうとしている。関西は左、関東は右という話も数年後には通じなくなっているのだろう。こんな具合にエスカレーターのマナーはよく聞くのだが、エレベーターのマナーというのはあまり聞いたことがない。
 降りる人が先という暗黙の了解があるぐらい。上座だとかそういう話を聞いたことはない。強いて言えば、上司と乗るときは部下がパネル操作をするというぐらいだろうか?とは言え、エレベーターの中でも権威や上下関係を示さないと気がすまないような小物に誠意ある対応なんてしたくはない。
 マナーとは少し違うかもしれないが、気遣いのできる人がエレベーターから降りる際に閉じるボタンを押していくことがある。こういうスマートな振る舞いには眼を見張るものがある。自分のことだけでなく、全体を見渡せている余裕が感じられる。長らく素晴らしい気遣いだと思っていた。
 でも、とても残念なお知らせがある。機種にもよるが、エレベーターの扉って完全に開ききってからでないと閉じるボタンが利かないのだ。
 だから、扉が開く始めると同時に風のようにするりと扉を潜り抜ける人が、閉じるボタンを押していたとしても何の意味もないのだ。最近、高いフロアで仕事をするようになったので、この悲しい事実に気がついてしまったのだ。スマートに見えていた自分で閉じるボタンを押す人々は、全然スマートではなかったのである。ぼくは彼らが去った後、扉が開ききったのを確認してゆっくりと閉じるボタンを押す毎日なのである。