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蛇の罠

by 唐草 [2019/06/27]



 これまでにぼくは、いくつものプログラミング言語をかじってきた。PHPのように仕事にできるぐらいに書ける言語もあれば、Objective-Cのようにすっかり書き方を忘れてしまった言語もある。プログラミング言語にも流行り廃りがあるので、自分の手足のように操れた言語でも書く機会がなくなってしまったものもある。今の時代を生き抜くために新たに学んでいる言語もある。
 プログラミング言語の習得は、英語などの人間が使う自然言語の学習よりもずっと簡単である。多くの人が躓いているのは、言語そのものではなくアルゴリズムの部分。コンピュータに適した論理的な考え方を学ぶほうがずっと難しい。逆に言えば、一度コンピュータ的な考え方を身に付けてしまえば、様々なプログラミング言語を簡単に習得することができる。自然言語で言うところの過去形とか複数形などのヨーロッパ語圏的な考え方を理解してしまえば、英語やドイツ語・スペイン語あたりの習得が楽になるのに似ている。もちろんプログラミングにも自然言語で言うところの方言のような独特の表現や考え方があるので(だからこそたくさんの言語がある)、一から十まで書けるようになるわけではない。でも、入門レベルで躓くことはなくなる。
 ぼくは、これまでC言語に端を発するC言語派生系のプログラミング言語を学んできた。四則演算やカッコの使い分けのような基本的なことから関数の使い方に至るまでどの言語でもそっくりだった。違いと言えば、記述ルールのゆるさぐらいしかない。だからどの言語も記述方法に疑問を抱くことも少なかったし、躓くこともあまりなかった。
 ここのところAIを作るためにPythonという最近人気の言語を書いている。Pythonは比較的新しい言語で、C派生系の血を(いとこの孫ぐらい)引きながらもCのめんどくさいところを限界まで簡略化した書きやすさが売りだ。C言語の流儀にどっぷりハマっていると、書いていてなにか物足りない感じがする。特に行末に「;」が無いことに尻切れトンボ的な不安感がある。確かにそういう小さな違和感はあるが、煩わしいカッコに振り回されることもないし、よく使う言葉は極限まで短縮されているなど様々な工夫が確かな書きやすさを実現している。
 今では、すっかりPythonの書き方が気に入っている。C言語が登場してから40年以上経過している。その間に多くのプログラマを悩ませてきた面倒な要素をすべて排除してくれた言語なのだろう。
 でも、ひとつだけ困ったことがある。Pythonの略式記法に慣れてしまったので、昔ながらの記法の他の言語が全然かけなくなってしまったのだ。楽な環境は、一瞬で人をダメにする。