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RPGハウス

by 唐草 [2019/06/22]



 今日のミッションは、包丁を研ぐことだった。人を刺そうとかそういう物騒な目的のために研ぐのではない。やわらかい野菜とかを切る際に刃が引っかかって押しつぶすような感じになってしまうのが、ここのところ気になっていたからだ。それに切れ味の悪い包丁を使う方が大きなケガにつながる。安全と快適さのために研ぐのだ。
 それにぼくは昔から刃物を研ぐのが好き。研ぐにつれて刃が砥石に当たる感触が変わっていく。研ぎ始めはカリカリと引っかかるような感じなのだが、ちゃんと刃が整ってくると吸いつくような感触に変わっていく。また、見た目も鏡面のような輝きへと変化していく。変化を指で感じて目で見ていると「道具の手入れをしているんだな」という充実感に満たされる。これを言うと物騒な危ないやつだと思われそうなので、ここ以外では公言していない。
 包丁を研ぐのはかなり久しぶりだ。洗面台の下の棚から砥石を出そうとした。柔軟剤とか詰め替え用の洗剤をかき分け棚を覗いたのだが、そこに砥石の姿はなかった。確かにここにしまったと思っていたのに。いったい砥石はどこにあるのだろう?
 思い当たる場所を片っ端から引っ掻き回していった。食器戸棚のすべての段を確認した。工具類が隠されているぼくのベッドの下もライトで照らしながら探した。でも、一向に砥石は見つからなかった。
 気が付いたら部屋が大変なことになっていた。滅多に開けない棚を開けたり、奥にしまわれたコンテナを動かしたりと引っ越しまがいのことをしていたので、部屋の中が埃だらけになっていた。今日は砥石探しを諦めよう。まずは目の前の埃をどうにかしなくては。
 埃を一網打尽にしようと部屋の隅に立てかけてあったモップを手に取った。するとどうだろう。モップに張り付けてある使い捨ての不織布の上に猫がゲロを吐いていた。こんなもので掃除をしたら家中ゲロまみれである。慌ててモップ本体を洗って、新しい不織布を取りに別室のカゴのところまで行った。
 使い捨て掃除用具をまとめて入れてある木製の網カゴを手に取ったら想像以上に重かった。何が入っているんだと手を突っ込んだら、なんとそこに砥石があった。
 なんだ、この「風が吹けば桶屋が儲かる」的なつながりの見えない流れは?RPGとかアドベンチャーゲームの謎解きかよ。