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指先の深海蛸の耳

by 唐草 [2019/06/10]



 昨晩、台所の換気扇を掃除していたら指を切ってしまった。換気扇+指の怪我というと大惨事を連想してしまう心配性な方もいるかも知れない。確かに字面だけならかなり危険な予兆をはらんでいる。
 だが、心配はない。ぼくが指を切った原因は、ブンブン勢い良く回るファンに不注意にも指を巻き込まれたからではない。換気扇の下にある油受けに指を入れた際に、そこに隠されていた薄い金属板に指を挟んでしまったからだ。傷の程度も浅い。人差し指の先を5mmぐらい切ってしまっただけに過ぎない。「ツバでもつけてろ」と言われそうな軽傷だ。
 流行りの湿潤療法用の絆創膏を貼って治療はおしまいだ。この絆創膏なら傷口の乾燥を防げるので、切り傷特有のヒリヒリした痛みもない。何もしていなければ、指先を怪我したことすら忘れてしまうような状況である。
 だが、残念なことに傷のことを忘れることはできない。それどころか、右手の人差指の偉大さを物理的な傷の痛さとは異なる形で痛感しているところである。
 まず驚いたのが、絆創膏のエッジにびっくりするほど糸くず等の繊維質のゴミが付着することだ。猫の毛から自分のスネ毛までありとあらゆる糸くず状のゴミが付く。ちょっと気を許すと毛糸の指サックでもしているのかという状況になりかねない。つまり、普段から人差し指はそれだけの量のゴミに接しているということを意味する。アライグマのように頻繁に手を洗うぼくだけれども、そんな手洗いは気休め程度なのかもしれないと不安になりつつある。
 もうひとつ大きな問題が発生している。指先に貼った絆創膏は、残念ながら指の丸いカーブにフィットしていない。爪の部分で絆創膏が折れて重なり、深海に住むタコの耳のような形状になってしまっている。5mm程度の小さな出っ張りであるが、ぼくの行動を阻害するには十分すぎる突起となっている。特にキーボードのタイプを常に邪魔する。指の腹でキーのど真ん中を押したつもりでも、絆創膏の耳が隣のキーまで押してしまう。
 これは、ぼくのような2本指タイプでゆっくりとタイピングしている人間にとっては致命的な問題である。指がキーボードの上を這いずり回るような普段のタイピングが全くできない。そのせいでタイプのリズムが崩れて左手の運指まで悪影響が出てしまっている。この文章もここまでに何十回ものタイプミスが起きている。もう、イライラも限界に達しそうである。
 本当に小さな傷なのに、場所が場所だけに存在感が絶大だ。健全な身体のありがたみを手にあまるほど伝えてくれている。