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騙されていた少年時代

by 唐草 [2019/06/02]



 ぼくは、たしかWRC(世界ラリー選手権)のダイジェスト映像を見ていたはずだ。だが、気が付いたらFinal Fantasy V(以下FF5)の攻略動画を見ていた。某マンガのワンシーンを切り取った有名なコピペを張るべき状況に陥っていた。ぼくはYouTubeなどの動画サイトをあまり利用しない。だからこそ不慣れな分、うかつに動画を見てしまうと泥沼にハマってしまうのかもしれない。これは、Wikipediaでリンクをたどっているうちに時間を失ってしまうのと同じ現象だろう。
 ぼくが見たFF5の動画は個人のプレー動画ではない。検証寄りのゲーム動画だった。熱心に視聴してしまったのには理由がある。
 ぼくが知っている情報と動画の情報が食い違っていたからだ。
 FF5は、複雑な職業システムと無駄に多いアイテムの種類ゆえに戦略・戦術の選択肢が広いゲームである。ぼくもアイテムコンプリートなどを目指して何週も遊んだゲームだ。ネットでもソロクリアなどの過激なやり込み対象になっている。
 ぼくが持っているFF5に関する知識のほとんどは、NTT出版から出ている公式攻略本2冊の情報に基づいている。まだネットが普及する前のゲームなので、攻略本がすべてだった時代である。ゲームで遊ぶのと同じぐらいにワクワクしながら攻略本に記載されたアイテムリストやボスの攻略法を眺めていたものだ。その中身は20年以上経過した今でもよく覚えている。ぼくにとってのバイブルであり、FF5のすべてでもあった。
 ぼくが偶然見てしまった動画では、ぼくの愛読していた攻略本の誤りに言及していた。堂々と記載されている必勝法が間違っていたのだ。確かに戦略としては成り立ってはいるが、正攻法より難易度が高くなるというお粗末な作戦だったのである。
 20年来の誤解を知ったぼくに驚きはなかった。むしろ逆に、長い時を経てようやく自分の正しさを証明してもらった気分であった。小学生だったぼくは、攻略本の必勝法を鵜呑みにしてボスに撃破されていた。試行錯誤して正攻法で撃破したときに一瞬だけ攻略本への不信感を覚えた。でも、時分のやり方がうまくなかっただけなのかもしれないと考えて、バイブルである攻略本を疑うことはなかった。
 結局、今日までぼくは盲目的に間違った攻略法を信じていたのである。情報源が限られていた時代なので、公式にいいように弄ばれていた少年時代だったということになる。時間はかかったけれど、真実にたどり着けてよかった。