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緑の旗

by 唐草 [2019/03/07]



 見慣れぬ緑色の旗が、冷たい風を受けてはためいていた。落ち着いた緑色の旗の中央には、白い模様が描かれいた。絡まった大樹の根というには規則的すぎるが、だからと言ってスポーツカーのタイヤ痕と例えるのでは優雅さに欠ける。複雑だが心地よいリズムのある意匠だった。複雑な模様の下には、一本の細いサーベルが描かれていた。
 見た瞬間に何の旗だかすぐに分かった。なぜぼくの目の前にこの旗があるのかさっぱりわからなかったが、その緑色で優雅で複雑な模様を抱いた旗は間違いなくサウジアラビアの国旗であることには絶対的な自信があった。
 しかし、どうしても分からないことがある。それは、なぜぼくがサウジアラビアの国旗を知っているのかということだ。
 ぼくは国旗マニアではない。小学生の頃ぐらいだと学年に一人ぐらい妙に国旗に詳しい男子がいたかもしれない。ぼくは、そんな男子でもなかったし、そんな友達もいなかった。それどころか、ぼくは国旗のことなんて全然分かっていない。ヨーロッパに多いトリコロール組の見分けなんか全然つかない。同じように北欧に多い十字模様の旗もさっぱりわからない。ここに下手なことを書くと国際問題に発展してしまうかもしれないのでやめておこう。
 古典的な手品で用いられる小さな万国旗の中に目にしたことのあるものはいくつもある。でも、国と国旗の組み合わせとなると自信がない。分かるのなんて、日本の日の丸とイギリスのユニオンジャックとアメリカの星条旗、それと国旗の名前は知らないが中国の赤い旗ぐらいだ。
 国旗に興味がなくても、サウジアラビアの国旗を知る機会はあるだろう。例えば、中東諸国へ旅をしたことがあるとか、中東出身の知人がいる場合が考えられる。だが、残念なことに日本の狭い村社会でセコセコ生きるだけのぼくにそんな国際的なつながりはない。ぼくの国際教養なんて中東料理どころか挨拶の言葉さえろくに分からないレベルなのだ。
 そんなぼくが、なぜこんなにも自信を持って目の前の緑の旗をサウジアラビアの国旗だと断言できるのだろう。それが不思議で仕方がない。ぼくの薄っぺらい人生を振り返ってもサウジアラビアとの接点なんてひとつも思い出せない。いったい、どのタイミングで、どんな形でぼくの頭の中にあの意匠は埋め込まれたのだろう?
 知っていること、そして分かることが、ここまで気味が悪いと感じたことはそうそうない経験である。だれか、ぼくとサウジアラビアのつながりを教えてくれ。