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温めろ!ヒートシンク

by 唐草 [2019/02/18]



 以前から主張しているようにぼくは、ヒートシンクが大好きだ。好きな理由も単純明快である。
 まず単純な金属の集合体であるという無骨さがいい。PCの中を覗くと繊細そうな基板の上にどっしりとあたかも10年前からそこにいましたという感じで鎮座している堂々たる姿が好きなのだ。また、金属の塊であるということが確かに感じられる重さは、見ることも触れることもできないデジタルデータとは異なり「そこにある」という確かな実感をもたらしてくれる。ついで、確実な冷たさが信頼できる点である。指で触れるといつでも冷たく感じられるということは、確実に放熱している証である。これは高密度化された半導体の塊とは違う原始的な安心感とさえ言える。
 量子効果さえ考慮されるほどに緻密にパッケージ化された現代のコンピュータの中において、唯一シンプルな熱交換という物理現象を利用しているヒートシンク。最近では、薄い金属板を組み合わせただけでなく、熱対流を考慮したパイプを利用しているものも少なくない。性能は複雑な方がいいのかもしれないが、ぼくは昔ながらの金属塊かいから削り出したことが感じられる骨太なデザインの製品のほうが好きだ。
 ぼくの机の上に4つもヒートシンクが置かれているのは、ただPS4を効率よく冷やしたいからではない。机の上を彩る趣味の小物としての側面もあるのだ。黒い塊だけど。
 ヒートシンクについてこれで何度目か分からないが、いつものように熱く語ってしまった。聞かされている方は、冷え冷えだ。ぼくの話が場を冷やすヒートシンクのようである。
 さて、ここからが本題。ヒートシンクの役割は熱いものを効率良く冷ますものだと考えられている。ぼくも普段は常にそう考えている。でも、この認識は正しくない。ヒートシンクの正しい役割は、熱交換であって、冷却ではない。たまたま熱いコンピューターの心臓部で使っているから冷却機器という印象が強くなってしまっているだけ。
 冷たいものを温めるために使うことだってできるのだ。
 昨晩、夕飯を作ろうとしたら冷凍肉を解凍するのを忘れていたことが発覚した。自然解凍推奨の真空パックされた生肉なので、湯煎などで解凍するのはよろしくない。ぬるま湯に漬けておいても肉は氷の塊なのですぐに冷水になってしまう。夕飯に間に合わせるには、どうするべきか?
 ぼくのたどり着いた答がヒートシンクの利用である。
 厚手のビニールで真空パックされた冷凍肉の上に3つの真っ黒で無骨なヒートシンクを置いた。金属の塊は数秒で氷のような冷たさになった。確実に肉の冷気を空気中に放出している。これから基板を料理しようとしている三流SF映画のワンシーンにしか見えないのが玉に瑕だが、変化が目に見えるほどの勢いで解凍が進んでいった。
 ヒートシンク。ときに調理器具にもなる。便利ないいやつである。