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負のピタゴラ装置

by 唐草 [2018/12/04]



 Eテレの番組の影響で日本では「ピタゴラ装置」とも呼ばれる複雑なカラクリ装置(ルーブ・ゴールドバーグ・マシン)は、機械としての意味は皆無だが見るものの目を釘付けにする楽しみに満ちている。予想外な形で装置が連携していくさまに驚くこともあれば、ミリ単位の精緻な動きに感嘆の声を上げることもある。そして、成功の映像を仕上げるまでにいったい何度トライしたのだろうかと考えると撮影スタッフに頭が下がる思いである。
 いくつもの装置が連動する様子は理屈抜きで気持ちいい。パズルのピースがピタリとハマる気持ちよさにも似ているし、手品を見ているような狐につままれたような感覚もある。
 こういう機械を見ていると、1度ぐらいは自分で装置を作ってみたい気持ちが沸き起こってくる。とは言え、作るには緻密な計算と綿密な設計が必要なのである。装置を見た興奮だけで一朝一夕に形にできるものではない。
 だが、逆な装置なら作れるかもしれない。1つの失敗が波及的に広がっていき、最終的に大きな破綻を迎える悲しい装置である。
 なんでこんなことを思ったのかというと単純な理由がある。今日、ぼく自身が負のピタゴラ装置とでもいう破綻を迎える装置を流れるボールのような経験に巻き込まれたからである。
 出勤しようといつものように駅まで自転車を漕いでいた。クロスバイクで軽快に走っているので当然車道を走っている。するとぼくの前に1台の自転車が割り込んできた。その自転車は歩道を走るようなゆっくりとしたペースで、今にも倒れそうに左右にフラフラとしていた。自動車の通行量も多いのでとても抜かせない。イライラしながら後ろを追走する形となった。
 遅い自転車のせいで、大きな交差点の信号に引っかかってしまった。ぼくだけのペースなら絶対に通過できていたのに。信号に引っかかったせいで、長い自動車の列に巻き込まれてしまった。左折する車を先に行かせたりと次々に障害が立ちふさがった。車列のせいでペースが落ちて、踏切に引っかかってしまった。踏切での停止時間のせいで、次の交差点で散歩する保育園児の群れに巻き込まれてしまった。保育園児の群れに巻き込まれ前に進めず時間をロスしたせいで、駐輪場の手前の空きスペースを1台前の自転車に奪われてしまった。駐輪スペースが奥になり歩く距離が増えたせいで、乗ろうと思っていた電車をタッチの差で逃すこととなった。
 こんな具合に1つの障害が、次の障害に引っかかる原因を生み出すという負の連鎖に巻き込まれてしまったのである。これぞまさに小さな綻びが大きな破綻へとつながる負のピタゴラ装置。割り込んできた自転車、許すまじ!