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得体の知れないものを頭に塗る

by 唐草 [2018/10/07]



 ここにはだいたい3ヶ月に1度のペースで書いているが、ぼくは理髪店で髪を切っている。オシャレに疎いぼくが迂闊に美容室に足を運んでしまったら、きっとあまりに場違い過ぎて他の客から蔑むような視線を向けられ、美容師からは「なんでこんなやつを相手にしなくてはならないんだ」とため息混じりの対応をされるに違いないと一方的に恐れているのだ。
 理髪店と美容室の違いと言うと、一般的にカミソリの有無が挙げられる。でも、これだけが違いではない。トニックの有無というのも忘れがちだが大きな相違点だろう。
 理髪店で髪を切られ洗髪をした後、仕上げのひとつ前の工程でいつも「トニックはどうしますか?」と聞かれる。
 ぼくの返事はいつも同じだ。
 「お願いします」と一言だけ応えている。
 つけてもつけなくても同じ料金ならつけてもらったほうがお得というケチな精神からつけてもらっている訳ではない。トニックのスッとするするようで鼻に残る独特な匂いが、髪を切ったという気分にさせてくれる。自分でもいい匂いだとは思っていないし、オッサン臭い匂いだと思っている。いつも身にまといたい香りではない。だけれども髪を切った満足感を鏡を見なくても実感できるようにいつでもトニックをつけてもらっている。
 普段は優柔不断なぼくだが、こればかりは返事に迷ったことは一度だって無い。いままでも、そしてこれからも即答でトニックをお願いするだろうと疑うことすらなかった。
 でも、急に気になってしまったのだ。「このトニックと呼ばれる液体は、一体何のために塗っているのだろうか?」と。
 効果や効能を全く理解していないのだが、いつでも塗ってもらっている。塗ってもらっても髪の毛はいつもと変わらない。だから髪の毛をセットするためのワックスなどの類ではないことは間違いない。だとすると考えられるのは、育毛剤的な成分か男物の香水のようなもののどちらかだろう。でも、育毛剤ならこんなに強い香りにする必要はない。やはり香水的なものなのだろうか?
 考えてみてもよくわからない。
 正体を分かっていないという事実に気がついてしまった今、トニックをお願いするというのは頭に得体の知れない者を塗っているというのと全く同義になってしまった。昔から行われているので害はないだろう。アレルギー反応が出たこともない。でも、正体がわからないということを認識してしまうと急に気味が悪く感じられるのもまた事実である。
 一体、ぼくは頭に何を塗り続けていたのだろうか?