カレンダー

2018/10
 
21222324252627
28293031   
       

広告

Twitter

記事検索

ランダムボタン

閃きはパンツとともに

by 唐草 [2018/10/05]



 今日、職場でやったことと言えばデスクで頬杖をつきながら苦虫を噛み潰したような不機嫌そうな顔でディスプレイを睨んでいただけだ。
 先月から2つのソフトを連携させようと四苦八苦している。開発者の仲が良いのか、それとも思想的な方向性が近しいのか、はたまた利益を最大化するために談合したのかは知らないが、2つのソフトは標準で連携するように設計されている。公式マニュアルや技術系ブログを確認したところ、注意点などまるで存在せず、数度クリックするだけで相互の連携が実現できると書かれていた。
 ぼくは、確かに指示通り作業を行った。中級者にありがちな独自解釈で手順を飛ばすような浅はかなミスはしない。あたかも初心者のように慎重にマニュアル通りの作業を完遂した。
 だが、まったく連携が実現できなかった。2つのソフトをそれぞれAとBとするならば、AからBにはつながるが、BからAにはつながらないという一方通行な状態に陥ってしまった。
 暇な時間を見つけては何度もトライしてきたが、再入力しても、設定をリセットしても、ソフトを再インストールしてもうまくいかなかった。何をしても連携できないと表示されてしまう。
 しかも、ぼくが遭遇している問題はかなりのレアケースらしい。日本語に訳されたエラーメッセージは、誤訳のまま放置されている。英語のエラーメッセージで検索をしても、開発フォーラムが1つ引っかかるだけ。しかも、解決に至っていなかった。
 何度試してもうまくいかないので、今日は大胆なアプローチを試みた。エラーを無視して強引に連携できるようにソースコードを改変しようと企んだ。だが、禁じ手に近いこの企みも失敗に終わった。
 3時間以上粘ったものの何の成果も得られず、失意のまま帰宅することになった。折しも空からは、まるで今のぼくの心情を表すかのような大粒の雨が地面を叩きつけるように落ちてきていた。出かけたときは曇天だったので、簡易的なカッパしか持っていなかったし、泥除けのない自転車に乗って駅まで出ていた。少し視界が煙るほどの雨の中をおよそ雨には適さない自転車と服装で走り抜ける羽目になってしまった。
 成果の得られぬ仕事で疲弊しきっていた上に、家についたときにはズボンは冷たく濡れて足に張り付き、下着まで冷たい水が染み込んでいた。まさに踏んだり蹴ったりである。
 濡れた体のまま洗面所に飛び込むと、重く冷たくなった服を肌から引き剥がすように脱いでいった。まるで漏らしてしまったかのようにびしょ濡れになったパンツを脱いだ瞬間のことだった。まったく何の脈絡もなく、ソフトの連携がうまく言っていなかった原因が閃いた。仕事のことなんて微塵も考えていなかったのに、すべての事象がキレイに一列に並んで複雑な隙間から一直線に光が指すような見事な閃きがやってきた。体が冷えていることを一瞬で忘れるような高揚感に包まれ、危うく何も身に着けずにPCの前へと走り出しそうになってしまった。
 乾いたパンツを身に着けてから閃きを試してみた。ぼくの閃きは、完全に正しかった。すべてが上手く噛み合い、連携は成功した。
 パンツが濡れたのも無駄ではなかったのかもしれない。