カレンダー

2018/05
  
  
       

広告

Twitter

記事検索

ランダムボタン

オブラートで包まない

by 唐草 [2018/10/03]



 先日、「オブラートで包む」という慣用表現を実際に耳にした。あいにくぼくの辞書には、存在しない表現である。とはいえ、ぼくは歯に衣着せずにものをズバズバ言うタイプではない。どちらかといえば、機械的で冷たい対応しかしない。たぶん大人としての心の余裕が無いのだろう。「敵を作るのが怖くない」なんて言ってはいるが、所詮ただの強がりでしか無いのは自分でもよくわかっている。
 優しい言葉に言い換えることを「オブラートで包む」と例えるのはいつからなのだろうか?きっとかなり古い表現だろう。今の感覚だと、オブラートなんてものはかなり縁遠い存在である。昔、粉薬を飲むのに使っていたらしいという知識はあるが、自分の実体験に基づいた知識ではない。昔の日本人男性は髷を結っていたのを知っているのと同じような伝聞による知識でしか無い。実体験をともなう唯一のオブラートは、「ボンタンアメ」だけだろう。ただ、ボンタンアメを想像してしまうと「オブラートで包む」という慣用表現は、一体何を言わんとしているのかさっぱりわからなくなってしまう。
 時代の変化に合わせて「オブラートで包む」という表現は改めた方が良いのかもしれない。最近の薬は苦くもないし飲みやすい。オブラートに変わるものは、もう存在しないのかもしれない。強いて言えば、ゼリーだろうか?
 こんなことを考えていたら、ある疑問が浮かんだ。
 「オブラートで包む」の逆ってなんだろう?というか、そんな言葉ってあるのだろうか?
 ぼくが言う逆の言葉というのは、「アサヒスーパードライの逆は『夕立、ちょっと濡れちゃったね』」というようなネットで拡散したトンチ的な言葉遊びではない。意味的な逆である。
 「オブラートで包む」という言葉が「事実を優しく角が立たないように伝える」という意味であるならば、ぼくが求める言葉は「事実をあえて角が立つように大げさに伝える」というような意味の言葉である。どんな場面で使うのかイマイチ想像ができないのだが、強めの注意喚起をする場合やゴシップ記事などでは使えるかもしれない。
 「オブラートで包む」という比喩は、苦いものを飲みやすくするという行為から来ている。逆となれば、甘いものを食べにくくするとなるのだろうか?そう考えると「唐辛子をかける」とか「熱々にする」といったイメージが近い。もっと過激にするならば「ガラスの破片を混ぜる」とかそんな感じだろうか?発想が貧困なので、リアクション芸人向けのベタな罰ゲームのようなものと企業への嫌がらせみたいなことしか思い浮かばなかった。
 「火に油を注ぐ」が一番近いような気もするが、なんか違う。もっと、こうドス黒い悪意を込めて相手の心を立ち直れないほどグサリと深くえぐるような言葉が欲しい。