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逆サイコパス

by 唐草 [2018/08/26]



 先日、ある雑誌で脳に関する最新のレポートを読んだ。と言っても脳科学とか脳外科の専門的な記事ではなく、もう少し一般向けの科学記事だった。そうでなければ、ぼくなんかが理解できるわけがない。
 その記事では、昨今耳にする機会が増えている「サイコパス」に関して脳の機能と構造から説明をしていた。個人的にはサイコパスという言葉には馴染みがある。アニメのタイトルとかにもなっていたが、ぼくがこの言葉を知ったのはアメリカのサスペンスドラマ『クリミナル・マインド』からだ。『クリミナル・マインド』でも初期の頃は「異常犯罪者」と訳されていた言葉が、いつの間にか「サイコパス」に置き換わっていたように記憶している。ドラマの中でしか耳にしない専門的な言葉かと思っていたのだが、気がついたら多くの人が知っている言葉に変わっていた。何が「サイコパス」という言葉を広く知らしめたのだろう?まぁ、日本での言葉の浸透の話は置いておこう。
 一般的なサイコパスのイメージは、極度に利己的で他者を顧みない冷酷な犯罪者というようなイメージが強いように思える。まぁ、そういう形でサイコパス要素が発露することも少なくないのだろう。それに、そういう形のほうがドラマ映えもいいのだろう。
 ただ、このような認識はサイコパス一部でしかなく、全体を理解しているとは到底言い難いということを雑誌から学んだ。もっと一般的な定義をするのであれば、脳の構造的に他者の気持ちに共感できない人ということになるらしい。最新の研究では、他者に共感する脳の部位が小さく、十分に機能していないということが明らかになったそうだ。
 ここまでの話だったら、あまりおもしろい話題ではない。「目に見えない脳の病気は怖いね」ぐらいしか感想もでない。
 ぼくが記事を読んで面白いと感じたのは、この先である。
 脳の共感を司る部位が、一般的な人よりもずっと大きい人々というのがいるらしい。こういう人は、他人の痛みであっても自分のことのように感じてしまうらしい。そして、それを見過ごすことはできない。ようするに過剰に共感できる人。仮に自分に被害が及ぼうとも、行動を起こさざるを得ないとそうだ。いわゆる利他的な人になると記事に書かれていた。つまり、サイコパスの真逆の人というのが、脳の機能的に存在するらしい。
 研究が行われたアメリカでは、自己犠牲を顧みずに英雄的な行動をした軍人や消防士などにその傾向が見られるとの報告があった。
 この記事を読んで思い出したのは、先日迷子の2歳児を救出した男性。どうしてあそこまで他人のために行動して、他人のために涙できるのだろうと不思議で仕方がなかった。もちろん、後天的な社会的な影響も無視できないが、根本から脳の機能が違うという可能性もあると考えられる。
 生まれながら英雄に成ることを運命づけられた脳の形。自己犠牲を厭わぬ聖人君子に成るより選択肢が無い脳を持って生を受ける。それは、本当に幸せなことなのだろうか?普通の脳しか持っていないぼくには、どうしても理解できない。