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卒業証明をゲットせよ

by 唐草 [2018/06/19]



 ぼくの経歴は、極めて胡散臭い。自分の履歴書的なものを作っているとぼく自身でさえ嘘を盛り込んでいるような気分になってくる。多くの人が自身の実力でキャリアを切り開いてきているのに対して、ぼくは完全に運だけで生きている。ゲーム的に言うならラック全振りタイプの人間だ。力も素早さも賢さも何もない。
 そんな胡散臭い経歴を訝られた訳ではないのだが、大学の卒業証明を持ってこいと言われた。疑われている分けじゃ無いと思うんだけど、そう言いきれないところがなんとも悲しいところだ。
 と言う訳で、今日は卒業証明を発行してもらいに母校に行ってきた。母校に行くのは久しぶり。最後に行ったのは、3年ぐらい前だ。確かに3年ぶりの訪問は、久しぶりと言うに十分な期間である。ただ、一般的な社会人に比べると遥かに高い頻度で母校を訪れているようにも思える。
 学生時代はほとんど縁の無かった事務室に向かう。授業時間中に大学へ着くよう計画的に動いていたので、計算通り学生の姿はまばらだ。事務室もガラガラである。案内にしたがって卒業証明の発行を申請した。
 手渡されたのは1枚の申請用紙。
 住所、氏名という基本情報やどの学部に在籍していたかなどを記入する。ある欄に差し掛かった時、ピタリとペンが止まってしまった。
 「学籍番号」の欄があったのだ。
 そんなもん、覚えていないぞ。タダでさえぼくは電話番号などの数字の羅列を覚えるのが苦手なんだ。ましてや、もう10年以上使っていない番号なんて覚えていられるわけがない。
 だが、別の事実を思い出した。学籍番号は、学部のサーバにログインする際のIDだった。SSH経由で何百回も打ったはずだ。ペンを置いて、頭の中にキーボードを思い描く。やはり、指は覚えていた。
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 さらには、パスワードまで思い出せた。時々脳裏に浮かぶ謎の6桁の数字の正体は、これだったのか。だが、このIDは学部のIDだった。学籍番号の一部を含んでいるけれど、学籍番号そのものではない。
 残念ながら学籍番号を思い出すことはできなかった。その事実は、証明書発行に微塵の影響も与えなかった。結局のところ、事務の受付でまったく関係ないことを思い出し、大学時代のノスタルジーに浸りつつ謎の記憶の正体判明に膝を打っていただけだった。